甲子園に向け守備練習する坂井の吉田温郎(手前)ら内野陣=7月29日、福井県坂井市の坂井高校グラウンド

 「打てないチームなので…」。打線の話になると、川村忠義監督も、主将の吉田温郎も同じ言葉を口にする。坂井は福井大会5試合で本塁打ゼロ。チーム打率は2割8分9厘、打点21。個人打点は最高でも3だ。

 統合前の春江工業が2013年春の選抜大会に初出場したときは、強打の捕手栗原陵矢(ソフトバンク)がいた。今は打撃で飛び抜けた選手がいない。「打てないと分かっているなら工夫して得点するしかない」。川村監督は小技、足技を絡め、チームに「つなぐ意識」を植えつけてきた。

 それを象徴する場面が敦賀との決勝にあった。1点リードの二回1死三塁で打者は1番吉田。サインはヒットエンドランだった。「内野ゴロを転がす」。三塁走者の石川雅晴がスタートを切り、吉田は外角球に食らいついた。弾んだ打球が二塁内野安打となり、追加点が入った。吉田は「そういう練習もしていた」と事もなげに振り返る。

 七回もヒットエンドランで野選を誘うなどし、1死二、三塁。3番帰山賢也はバントの構えからバットを引いて打つバスターで右前に運び、3点目を挙げた。「しっかり球筋を見てとらえるように」。監督の意図通りに結果を出した。

 福井大会で吉田、松浦光輝の1、2番は三振ゼロ、6番出店朋樹は1安打ながら8四死球を得た。簡単にはアウトにならない粘りの姿勢も随所に見られた。

 一方、少ない得点を守り抜く堅実な守備も武器の一つだ。福井大会5試合で5失策。特に実戦、接戦に強い守備が目立った。

 福井商との準決勝。2点リードの六回1死二塁で先発吉川大翔(ひろと)が中前に運ばれた。中堅手の牧野大和(やまと)は前に出て打球を捕ると、本塁へダイレクト返球。二塁走者をタッチアウトにした。「打球が来ると想定して、送球のイメージはできていた」と牧野。相手の流れを断つ大きなプレーだった。

 決勝では、二塁手の松浦が七つのゴロをさばいた。「打ち取った当たりをしっかりアウトにしてくれる方が投手はうれしいはず」と松浦。個別の自由練習で守備を鍛え、レギュラーが守ってのケース打撃で実戦感覚を養った成果が出た。

 私立の強豪校のように豪快な一発はないが、小技と堅実な守りで接戦をものにする。「こまいね」。川村監督はそう言いながら、坂井らしい戦い方に手応えを感じている。

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