福井商業との準決勝で最後の打者を打ち取り、ガッツポーズする坂井の先発吉川大翔(奥)=7月26日、福井県営球場

 エースの成長なくして、夏の甲子園初出場はなかった。坂井のサウスポー吉川大翔は、福井大会全5試合に先発し、42回を投げて防御率0・86。準決勝、決勝は2試合連続完封で初優勝の原動力になった。決勝の2日後、「優勝は終わったこと。甲子園に向けて気持ちを入れてやりたい」と疲れも見せずに言った。

 福井市中藤小学校で野球を始め、投手になった。灯明寺中学校では中学硬式野球チームの福井永平寺リトルシニアに所属。東海連盟の選抜チーム入りし、台湾での国際大会に出場した。

 マウンド上では表情を変えず、常に冷静。直球とカーブ、スライダーを低めに集め、打たせて取る。5試合で38三振を奪ったが、吉川は「三振の数は意識しない」。与四死球6が示すように制球力に自信を持つ。

 試合を想定し、打者を立たせて150球を投げ込むこともある。特に左打者の内角スライダーは打者のひじを目がけ勇気を持って投げ続け、精度を高めた。

 躍進のもう一つの理由は「気持ちの面」が大きいと吉川。以前はウエートトレーニングや走り込みなどで妥協することもあったが、「逃げずにできるようになった」。スクワットの負荷は1年時の100キロから、2年生の冬は150キロでできるようになった。「苦しいときは試合で負けたことを思い出した」

 精神面の成長は投球にも表れた。昨夏代表の北陸との1回戦。前半は相手に押され、窮地が続いたが、粘り強くしのぎ、7安打1失点で完投。サヨナラ勝ちを呼び込んだ。「ピンチであきらめずに立て直すことができ、自信になった」。大きな分岐点だった。

 普段は口数が多くない。主将の吉田温郎は「あまり自分の気持ちを人に言わない。照れ屋」とエースの素顔を明かす。昨夏は気持ちを表に出さない部分が災いし、ベンチを外された。

 新チームで背番号1を背負った吉川に、川村忠義監督はハッパをかけ続けた。好投した今大会も試合ごとに「もっと良くなる」「もう一つギアが上がる」とコメント。それは「まだまだ伸びしろがある」という期待の裏返しでもあった。

 準決勝で福井商業の好投手に投げ勝ち、吉川は珍しくガッツポーズした。「甲子園でも伸び続けたい。最速の140キロを出す」。殻を破った左腕は、聖地の初マウンドでさらなる進化を遂げるはずだ。

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 福井県の県立校の坂井が学校統合4年目で夏の甲子園初出場を決めた。福井代表の初出場校は1994年の敦賀気比以来23年ぶり。ユニホームの色にちなんだ「オレンジ旋風」の軌跡や戦力などを紹介する。

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