21歳の時に劇団をやっていた、42歳の男5人衆の物語だ。もう一回シバイをやろう、と飲み会の席で奮起する中年たち。――ここまでなら、まあ、想定範囲内の光景である。ありとあらゆる飲み屋で、そんな口約束が、ビールの泡と一緒にはじけては消えているのだろう。

 けれど本書は、それを行動に移した場合に、42男たちが直面するであろう諸問題を、実に率直に描きとっている。

 まず、身体の衰え。いつも豪放磊落、伸びやかすぎて失言がたえない主演俳優は、いざというときに立ち上がってくれない下腹部の突起物に心を痛めている。

 演出を任された県庁職員の主人公は、作家としてなかなか目が出ない自分と、もりもり働く妻とを比べて気を落としつつも、同僚女子とひそかに逢瀬を重ねている。

 若くして家族を失い、高速道路に乗ったら130キロは出してしまうスピード狂の男は、心の中に湧き出す感情を、表に出したり相手にぶつけたりする方法がまるでわからない。

 あれから舞台俳優の道を選ぶも、うまい具合に波に乗れぬまま40を越してしまった男は、友の遠慮のない「イジリ」に傷つき、大役を放り出して姿を消す。

 そして、俳優としてすっかり売れちゃった男は、「ナントカ大陸」的なドキュメンタリー番組のディレクターを引き連れて大仰に登場するも、仲間たちの愛憎くんずほぐれつを目の当たりにしながら、「プロとして売れ続ける」ことの苦悶と覚悟を背中で示す。

 こんなにこじれちゃうかなあ。まるで同世代の私は思う。ただ「シバイやろーぜ!」って盛り上がっただけなのに。誰かの無遠慮が誰かのコンプレックスにぐさりと刺さり、そのコンプレックスが別の誰かを苛立たせ、いろいろ気がついてしまう者が事態収拾をはかって奔走するも、裏目に出ちゃってむしろ事態は悪化するばかり。何なんだよ。いい大人なのに。

 ……いや。いい大人だからこそ、事態は混乱するのだ。

 自分の生き方をある見定めて、自分はこの程度でいいのだと腹を決めてから幾年月。自分の歩き方や自分の保ち方をある程度確立させてしまっているからこそ、不測の事態に対応できない。自意識。プライド。そんなものたちが、彼らの足元にからみつく。

 それでも。それでも、幕は開くのだ。

 芝居づくりの業の深さはそれだ。仲間について、役柄について、つまり人間についてみんなで考え抜き、もがいた果てに降ってくる喝采。カタルシス。

 またやりたい、と思ってしまうんだろうな。やったことないけど、そう思った。

(双葉社 1400円+税)=小川志津子

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