夏の甲子園初出場を決め、ダイヤモンドを1周する坂井ナイン=7月27日、福井県営球場

 敗戦のたびに出直してきた。坂井は昨夏の福井大会4強、昨秋の県大会準優勝、今春4強と安定した成績を残しながら、頂点は近くて遠かった。それ以上に川村忠義監督は「ものすごく指示を待つチーム。積極性がなく駄目だと思っていた」と正直に振り返る。

 「弱小」「最低」。指揮官は昨夏の新チーム結成後、厳しい言葉をかけた。元気と積極性に満ちた前チームに比べ、言われたことを淡々とこなす選手が物足りなく映っていたからだ。

 昨秋の決勝は福井商業に0―2で敗れ、今春は準決勝で福井工大福井に2―9でコールド負け。練習でも試合でも選手からは「どうしたらいいですか」「次は何をすればいいですか」という言葉が口を突いた。

 業を煮やした川村監督は5月後半、学校グラウンドのマウンドに選手を集め、主体性を持って考える大切さ、夏の甲子園出場に懸ける思いなどをぶつけた。

 最初に反応したのは、チームのまとめ役で副主将の松浦光輝。練習試合であえて指示を出さない監督に「今はエンドランですよね」などと意見を言うようになった。「いや俺なら盗塁だな」。こんなやりとりが始まり、選手自らが動く雰囲気が出てきた。

 大会前の6月下旬には「選手が先回りして考える野球になってきた。こいつら面白いかも」。川村監督の考えを徐々に理解し、ピンチやチャンスで打開する積極性を身につけた。

 昨夏の準決勝で敗れた北陸との1回戦。エース吉川大翔(ひろと)を中心に前半のピンチをしのぐと、1―1の九回1死一塁で打席は1番吉田温郎(あつろう)。昨夏の試合に出場して悔しさを味わい、雪辱にかける主将の気持ちは誰よりも強かった。以心伝心。思いにかけた監督のサインは「打て」。吉田は右中間にサヨナラ打を放ち、「先輩の分も、自分の分も借りを返せた」と胸を張った。

 これで勢いに乗ったチームは「気を緩めず」(松浦)に勝ち上がり、準決勝では昨秋の決勝で敗れた福井商業に雪辱。敦賀との決勝は重圧の中で快勝した。

 「負けや悔しさを糧にはい上がってこそ強くなる」と川村監督。優勝インタビューで「最高の教え子たち」と言えるまでのチームに成長した。

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 福井県の県立校の坂井が学校統合4年目で夏の甲子園初出場を決めた。福井代表の初出場校は1994年の敦賀気比以来23年ぶり。ユニホームの色にちなんだ「オレンジ旋風」の軌跡や戦力などを紹介する。
 

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