都内で在宅勤務する日景学さん(画面左)とテレビ会議をする斎藤智示さん=福井市中央1丁目の「ビットブレイン」

 朝食後、自室のパソコン(PC)で仕事を始める。2年前に福井市のITベンチャー「ビットブレイン」に転職した日景学さん(51)の職場は、もともと住んでいる都内の自宅だ。「毎朝じっくり新聞が読めるし、子供の送り迎えもできる」

 在宅勤務は、情報通信機器を使うことで、場所と時間の制約を受けず、事務所以外で働く「テレワーク」という労働形態の一つ。同社は社員8人のうち6人が首都圏在住者で、いずれも在宅勤務だ。仕事のやりとりは、PCに付けたカメラを使ったテレビ会議で行っている。

 首都圏の別の会社で働いていた日景さんは、3年前まで片道約2時間かけて電車で通勤していた。転職し在宅勤務になってからは、「ゴルフの素振りをしたり、早めに晩酌したり、ゆったり時間を過ごせるようになった」と笑顔を見せた。

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 テレワークは、子育て・介護と仕事が両立できる手段として、政府の働き方改革実現会議の実行計画に明記された。総務省が、全国から抽出した常時雇用者数100人以上の企業5140社を調査したところ、テレワークを導入しているのは16・2%(2015年末)で、前年と比べ4・7ポイント増えた。

 ただ課題もある。日本テレワーク学会元理事の佐藤彰男龍谷大教授は「在宅勤務は労働時間の把握が難しい。長時間労働、無報酬労働につながらないよう労働時間を管理する仕組みが必要」と訴える。

 福井市内のソフトウエア開発業者は、在宅勤務者の勤務時間はチェックしていない。本人から始業時と終業時に連絡はあるが、仕事を怠けたり、残業したりしても社側は把握できない。担当者は「会社と社員との信頼関係で成り立っている」と話す。

 ビットブレインでは労働時間管理に力を入れている。在宅勤務者は自宅のPCを介して会社のPCで仕事をしている。作業時間は社側が設定でき、時間がくれば作業中でも接続が遮断される。日景さんは「時間に制約がある分、仕事に集中できる」。

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 テレワークは、首都圏に住む人が福井の会社に勤めるだけではない。当然、福井に住みながら首都圏の会社で働くこともできる。普及すれば、地方の人材不足と、首都圏の一極集中が同時に解消できる可能性も出てくる。

 総務省が1月、都市部在住者に行った調査では、農山漁村地域への移住希望者の割合は30・6%。そのうち20、30代の約2割が「すぐにでも移住したい」と回答した。

 ビットブレインの斎藤智示社長(44)は「福井に戻りたいが、転職はしたくないという都市部の福井県出身者も多いはず。そういった人材をどんどん県内に移住させる環境が整えば」と話す。都市部で生活していた人だからこそ気付ける価値観があり、それを踏まえたまちおこしや暮らし方の提案をしてもらいたいと考える。「在宅勤務者のコミュニティーができれば、地方創生をけん引する核になる」と期待を込めた。

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