【論説】嶺南6市町でつくる嶺南広域行政組合の「琵琶湖若狭湾快速鉄道(リゾート新線)」建設促進運動が中止となり、各市町と県が積み立てた約81億円に上る基金が宙に浮いた状態となっている。約50億円を支出している県が年内に方向性を出す方針を出していることから、12月の組合定例会で方針を出すと考えると、悠長に 構えてはいられない状況だ。基金は全て血税だけに、住民にしっかりと過程を示すためにも本格的な論議を急がなければならない。

 同鉄道はJR小浜線・上中駅とJR湖西線・近江今津駅を結ぶ地域鉄道。小浜―京都駅間の所要時間が現在の2分の1から3分の1に短縮されることが利点だった。しかし北陸新幹線小浜・京都ルート決定で不要となり、今年2月、建設促進運動の中止を決めた。

 基金は6市町が計約31億円、県が約50億円を支出している。市町分では小浜市が約14億円と半分近くを占め、若狭町は約8億円、敦賀市と美浜、おおい、高浜各町はそれぞれ約2億円となっている。

 今後、基金の一部あるいは全額を残す方法と、各市町に全額返還する方法が考えられる。特に年間予算の1割に近い14億円を支出している小浜市では「降ってわいた“埋蔵金”」という捉え方もあるようだ。分配すれば使いでのある額だろうが、嶺南振興のために積み立てた当初の理念を考慮すれば、安易な分配はあってはならないと言えるだろう。

 鉄道による京都までの時間短縮という目標は新幹線により解消されたものの、嶺南地方には交通上のさまざまな課題がある。例えば強風、積雪などで運休となりがちなJR小浜線の強靱(きょうじん)化や、北陸新幹線の敦賀開業以降に敦賀市以西へ観光誘客を進めるための交通網整備などが挙がる。

 また、現在は自動車で1時間半ほどかかる小浜―京都間の時間を、道路の整備で短縮してはという声もある。観光面だけでなく原発事故の際の避難道路としても有効だろう。

 約50億円を支出している県は「年内に方向性を出す」との方針で、リミットが示されている格好。組合の次の定例会は12月で、それまでに各市町の意思統一を図り、基金の方針を決定する必要がある。

 各市町の事務局レベルで方向性をすり合わせ、各市町議会で諮ることになる。時間的には9月議会までに行政側が方針を固めなければならない。

 せっかくの資金を最大限有効に使えるよう、各自治体に知恵を絞ってもらい、十分な時間をかけて論議を尽くしてもらいたい。嶺南地方の将来に向け、どのような方針が示されるのか注目したい。

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