仕事の進捗具合について話し合う社員たち。新入社員との交換日記も行っている=6月、福井市の清川メッキ工業

 人事評価が高く、残業が少ない社員を「定時ダッシュ賞」として、昨年度から社内表彰している通信インフラサービスのオールコネクト(本社福井市)。同年度上期の受賞者2人のうち、1人の男性が受賞を前に打ち明けた。「サボって、賞をもらっていると思われないだろうか」

 相談を受けた同社広報部の竹内真治さん(28)は「会社として評価していることを説明し、受賞してもらった」と振り返る。ただ多くの企業では、残業がいまだに「暗黙の評価基準」(経済関係者)になっているのが現状だ。

 同社は残業規制として、2015年から、午後11時~翌午前7時まで本社を閉鎖。残業代削減を業績評価指標の一つにした。西原萌人事部長(29)は「会社の残業時間は3年前に比べ半減した」。一方で売上高や利益は伸び続けているという。

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 4月の最終金曜日。大和ハウス工業福井支店の仕事は午後1時で終わった。2月から始めた隔月の「プレミアムフライデー」だ。同支店総務経理課の大崎努課長(44)は「顧客からのクレームはほとんどなく『良いことに取り組んでいるね』という反応が多い」と話す。同社は長時間労働の改善がない事業所を「ブラック」と認定し、事業所全体の賞与額を減額するシステムも導入している。

 同社のような大手企業が長時間労働の是正に動き始めている。味の素は18年度から「所定労働時間7時間」で労使合意。佐川急便は、一部で週休3日を導入した。

 ただ、中小企業からは「人に余裕がある大手だからできること。中小で労働時間を抑えるのは難しい」といった恨み節も聞こえてくる。ある幹部は「働き方改革が注目されるほど、中小には人が集まらなくなる」と“負のスパイラル”を懸念する。

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 人手不足を、社員の定着率向上で克服している企業がある。20年前、清川メッキ工業(本社福井市)の入社3年以内の離職率は47%。「既存社員の残業が増える上、品質が安定しない」(清川卓二専務)という課題に直面した。対策の一つとして導入した新入社員と若手社員による交換日記は、10年以上続く。技術的な相談はもちろん「休憩の取り方が分からない」など内容は多岐にわたる。

 今春入社した片川成美さん(25)は「仕事中には気を使って聞けないことが日記なら書ける。日記がなければ分からないままで終わっていたかも」と話す。日記は先輩社員が業務を見直すきっかけにもなる。玉村りえさん(36)は「教え方に問題があると分かることもある」。新人の悩みに気付くこともできるという。

 各職場には会社、部門、チーム、個人のビジョンと進捗状況を書き込むボードを設置し、仕事の「みえる化」を図る。やるべきことが明確になり、社員の改善提案は年間2500件に上るまでになった。清川専務は「品質が安定し、不良品やクレームが減り、その分時間が空いた。同じ労働時間内で新製品の開発に時間を使えるようになった」。同社の離職率は数%にまで減った。

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