夏イチゴ「すずあかね」の出来をみる研究員=福井県美浜町の県園芸研究センター

 福井県内農家の所得向上へ県園芸研究センター(同県美浜町久々子)は、施設園芸作物・夏イチゴの栽培技術確立に取り組んでいる。これまでの研究から「すずあかね」「夏の輝(かがやき)」の2品種が福井県の気候、風土に適していると判断し今後、洋菓子店など実需者の評価を求めていく方針。夏イチゴの取引価格は高く、50アール規模の作付けだと年間約3千万円の収入が見込めるという。県は栽培農家を増やし、県内をはじめ関西方面にも出荷していきたい考えだ。

  □業務用需要

 「とちおとめ」や「紅ほっぺ」といったスーパーなどで見かける一般的なイチゴは気温20度以上になり、日長時間が長くなると花芽を付けなくなる。これに対し、「すずあかね」や「夏の輝」は日長時間の影響が少なく、気温さえ下げてやれば花芽ができ、実を付ける。

 こうした「四季成り」といわれる夏イチゴは、ショートケーキに代表される業務用の需要が高く、東京や大阪の市場では1キロ2千円前後の高値で取引されている。かつては輸入に頼っていたが、2000年ごろから国内でも栽培技術の研究が進み、高冷地の北海道や長野県などで栽培が盛んになってきている。

 栽培は4月に定植し、6月から10月にかけて収穫する。糖度は8~10度と一般的なイチゴよりは低いが、ケーキに挟んだり載せたりするのには十分な甘さがある。

  □高収益

 県内では、ミディトマトを中心に大規模施設園芸に取り組む農家が増えてきている。県園芸研究センターは「施設園芸で高収益を生む、もう一つの柱を」と14年度に夏イチゴの研究に着手し、センター内の専用ハウスで試験栽培を続けている。

 「福井の気象条件で栽培できる品種」として全国から7品種を集め、生育状況や収量を比較した。昨年度までの試験研究で「すずあかね」は他より2~3割多い1株当たり380グラムの収量が得られ、果実の形が良い「夏の輝」も収量性が比較的高かった。

 10アール当たり8千株を定植した場合、収量は約3トン。1キロ2千円の相場に照らせば、売り上げは600万円に上る。50アールなら5倍の3千万円となり、同センターは「設備費や人件費を差し引いても500万~600万円は十分手元に残る」と試算している。

  □冷やす

 栽培技術の確立に最も力点を置いたのが「いかにイチゴを冷やすか」だ。花芽の基となる成長点がある株元に冷却水の循環チューブを当て、さらに高さ1メートルの栽培ベッドに敷き詰めたヤシ殻の培地も地下水で冷却した。夜間はハウスの開口部を閉じて、ヒートポンプで室温が20度以上にならないよう機械で自動調整した。

 冷却水の循環装置や遮光カーテン、水を霧状にして吹き付けるミストファンなど“フル装備”だと初期投資は大きいが、地下水が豊富な山間地なら冷却水の装置は必要なくなる。また「9月定植、12月~翌5月収穫の一般的なイチゴとうまく組み合わせれば1年を通して出荷でき、採算性がより高まる」(同センター)としている。

 同センターの調べでは、15年度に東京都開設の市場に7~10月に出荷されたイチゴの国産シェアは66%。福井県産の夏イチゴが食い込む余地は十分にあるとみている。

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