初水揚げされたトラウトサーモンを活締めする漁業者=4月24日、福井県小浜市の宇久漁港

 福井県の嶺南2カ所で行われているトラウトサーモンの養殖事業が試練を迎えている。今春水揚げされた養殖サーモンの生存率は小浜市西小川で約3割、おおい町大島は約5割にとどまり、採算ラインとされる「生存率7割」を下回った。県などによると、現時点で原因特定には至っていないが、淡水から海水に慣らしたり、大型いけすで成育を把握したりする難しさが背景にあるという。

 技術支援をしている県水産課によると、初シーズンとなった小浜市は稚魚(種苗)約1万3千匹に対して出荷できたのは約4千匹、2季目となったおおい町では稚魚約8万匹に対して出荷は約4万匹。双方とも採算ラインを下回る厳しい数字となった。

 ともに専用トラックで移送してきた稚魚(種苗)を淡水から徐々に海水に慣らしていく「馴致(じゅんち)」の作業をした後、沖合の大型いけす(直径25メートル)で育てた。4月の水揚げ開始後、徐々に生存率の低さが判明したという。

 同課は「詳細な原因は調査中」とした上で「養殖ふぐなどの小型いけすと比べて成育状況の把握が難しいほか、馴致がうまくいかなかった可能性もある」と説明。おおい町の事業に携わっている県立大海洋生物資源学部の末武弘章准教授(魚類生理学)は馴致の難しさに加え「輸送や温度変化によるストレスも関係しているのではないか。産学官でしっかりと検証・検討して、生存率を高めていくことが必要」と話す。

 各事業体の関係者は「生存率が7割以上でないと採算は合わない。大型いけすで魚の成育状況を把握するのが課題」(小浜)、「やはり馴致が難しい」(おおい)と受け止めている。ただ、試食会や販売先のスーパーなどで味は好評で、末武准教授も「双方のサーモンとも、他県産に負けない十分な品質だ」と太鼓判を押している。

 「養殖サーモン生産日本一」を目指す県が掲げる目標は、2019年度に県内全体で水揚げ400トン。重量ベースでみると今季、福井市鷹巣沖は約3トン(生存率8割)でおおいが約90トン、小浜は5トン余りと嶺南の実績が響いて計約100トンにとどまった。県水産課は「他県の事例も参考にして効果的な技術指導をしていきたい」としているが、品質と採算の両立に向けた試行錯誤が続きそうだ。

 ■トラウトサーモン養殖 サーモンは回転ずしなどで人気があり、県が大型いけすによる養殖を推進。嶺南ではおおい町大島で地元漁協と県漁連、福井中央魚市(福井市)などで構成する「福井沖合養殖振興組合」が2015年秋からスタート。小浜市西小川では市漁協と西小川、加尾、宇久の3区の漁業者、海洋土木建設業のイワタ(同市)の「市トラウトサーモン養殖振興協業体」が昨年秋から着手した。嶺北では福井市鷹巣沖で大型いけすによる養殖が行われている。いずれも秋に稚魚を大型いけすに運び込み、翌年4~5月から水揚げして出荷する。

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