【越山若水】俳人正岡子規が1902年、死ぬ間際まで新聞に連載していた随筆、それが「病牀(びょうしょう)六尺」である。そこに仕事が滞っているわが身のふがいなさを嘆く文章がある▼子規は悔しさを表す二つの故事成語を記している。まず「髀肉(ひにく)の嘆」。三国志の英雄・劉備は戦争がなく馬にも乗らないため、太ももが肥えてしまったという▼つまり平和すぎて手腕を発揮する機会がないと悲嘆すること。もう一つが「筆硯塵(ひっけんちり)を生ず」。文筆を仕事とする者が、怠け心かスランプか、筆が進まぬ様子を表す▼そこで子規が自ら考えた成句を披歴する。「錐(きり)に錆(さび)を生ず」。俳句分類の書物を編纂(へんさん)するのに使っていた千枚通し。何十枚の紙も簡単に突き通したのに、ふと手に取ると錆が出て2、3枚も通らない▼書物作りは江戸時代の俳句を通史的にまとめる大事業。しかし病気を患って3年間も放っておいた。それが悔やまれる(復本一郎著「正岡子規 人生のことば」岩波新書)▼話は転じて日本の政治。同様の境遇にあるのが最大野党の民進党だ。政権の座を奪われて約5年、対抗馬となるどころか「安倍1強」を助長してきた▼すっかり足腰がやせ細り「髀肉の嘆」。相手の横暴にクギも刺せず「錐に錆を生ず」。都議選ショックが象徴的だ。本日から安倍首相も出席して閉会中審査が始まる。核心を突く一撃で国民を見返せるだろうか。

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