東京学芸大理科教員高度支援センター元特命教授の川角博さん

 高校生の多くが「理科は面白い、役に立つ」と考えている。一方で、科学技術関係の仕事に就きたいという子は少ない。難しい研究に対して、「自分にはできない」と考えてしまう。学校で習う知識では太刀打ちできなくても、科学的な物の見方や考え方を育ててやれば道筋が見えてくる。その育成は知識を教えるのと同様、理科で必要な教育だ。

 体育の授業では走る。音楽では歌う。理屈を学ぶだけでは、実際に速く走ったりうまく歌ったりできないからだ。理科では観察や実験がそれにあたる。摩擦なら、実際に物を滑らせてみて止まるのを確認する。ボールの反発は、落とす高さや種類を変えて法則性に気付かせる。不思議だと思わせたらしめたもの。解決するために学びが始まる。

 現状でそれが実践できていない原因の一つは、大学入試で知識を問う設問が多いこと。改革は進んでいるが教員養成の問題もある。教員自身は問題解決能力を身に付けさせたいと考えているが、その教え方が分かっていない。

 私は高校卒業後、地元の町工場に就職した。その後大学に進み、高校の教員になったのは30歳目前。いわゆる超困難校で物理を指導した。学習意欲に乏しい生徒を相手に、考え方を教える必要性を感じたのが私の原点だ。

 たとえば問題集を解く。解答欄を見ると答えが合っており、分かったと思う。しかし、これは“分かる”ではない。答えを見なくても、あれやこれや考えて答えに違いないと判断できたときに、初めて分かったといえる。社会科学と違って、自然科学にはそれができる。

 理科に限らず、福井の教育レベルは高い。最低限を下回る生徒がほとんどいないのが特徴だ。豊富な宿題をベースに、子どもたちが疑問に感じたり自分で解決したりする能力を養っているのだと思う。

 大切なのは教員の教育への姿勢だ。何を目指して勉強させるのかを明らかにし、達成度を評価していけば、学力調査の結果にかかわらず、優れた教育が実現できていると胸を張れるのではないだろうか。

 ■東京学芸大理科教員高度支援センター元特命教授 川角博さん(63) 

 1953年、愛知県生まれ。NHK高校講座物理基礎講師、福井県教育総合研究所の先端教育研究センター特別研究員。高校卒業後に町工場で勤務し、22歳で大学進学。都立高校教員を経て、東京学芸大で附属高副校長や理科教員高度支援センター特命教授などを歴任。現在は首都圏の複数の大学で理科教育を指導する。

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