【論説】他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」の防止対策を強化する健康増進法改正案の国会提出が先送りされた。飲食店での規制を巡って厚生労働省の改正案に、自民党が「待った」を掛けた形だ。

 厚労省の調査で2016年の成人喫煙者の割合は19・8%と初めて2割を切った。昨今の規制の流れから「屋内全面喫煙もやむを得ない」とする喫煙者も少なくないはずだ。国民の健康を最優先し、自民党は厚労省案に歩み寄るべきだ。

 ■譲歩重ねる厚労省■

 世界保健機関(WHO)と国際オリンピック委員会(IOC)は「たばこのない五輪」を目指すことで合意しており、08年以降の五輪では罰則を伴う喫煙規制が導入されてきた。政府は20年東京五輪・パラリンピックでも実現を図るべく、改正案づくりを進めてきた。

 厚労省は当初、飲食店などは原則禁煙とし、喫煙室設置を認め、悪質な違反者には罰則を設けた。だが、業界の反対などを受け延べ床面積30平方メートル以下のバーやスナックに限って喫煙を認めるとの案で譲歩した。

 この案に対しても、自民党が「たばこ議員連盟」を中心に反発し、150平方メートル以下の飲食店は店頭に「喫煙」や「分煙」と表示すれば喫煙を認めるとの対案をまとめた。厚労省は激変緩和措置として数年間は自民案を特例として認め、その後、厚労省案に移行する譲歩案を示したが、議論は平行線をたどったままになっている。

 ■自民案では骨抜き■

 たばこから出る副流煙は喫煙者がフィルターを通して吸い込む主流煙に比べ、発がん性物質やニコチンなどの有害物質が数倍含まれ、国内では受動喫煙で年間約1万5千人が亡くなっていると推計されている。

 本紙健康面では、5月末からの禁煙週間に合わせ県内専門医に取材。記事では「たばこの煙はとても小さな粒子で、空気中に長期間滞留する。喫煙者が吐く息にも30分以上にわたり有害物質が含まれる。分煙や空気清浄機では受動喫煙は防げない」としている。

 こうした指摘からみれば、厚労省の当初案でも手ぬるく、自民党案は骨抜き、論外と言っていいだろう。自民党の分煙、喫煙室で健康被害を防げるという考えは、もはや世界標準ではありえないことを理解すべきだ。

 ■どうする「加熱式」■

 県内の喫煙率は19・3%と全国平均よりもやや低い。別の調査では15%台という数字もあり、もはや少数派、一握りといってもいい段階ではないか。

 国内ではポイ捨てなどを防ぐため屋外での規制が進んできたとされる。さらに屋内でも、となると、喫煙者にとっては厳しい。だが、現状でも飲食店に子どもやたばこを吸わない人がいる場合、はばかられるという人が多いのではないか。屋外の公共の喫煙場所をもっと増やしてほしいというのが本音だろう。

 一方、最近目に付くのが火を使わない「加熱式たばこ」。一部飲食店などで「可」とするところも出てきている。受動喫煙の影響が判明していないため、明確な方針は示されていないという。リスクはゼロではない、というのであれば現段階でも規制が必要ではないか。

 受動喫煙対策の論議の場は秋の臨時国会に移る。まずは成案を得る必要がある。

 気になるのは、安倍晋三首相の消極姿勢だろう。五輪の年に向けて「共謀罪」法を強行可決し、さらには「新しい憲法も」と意気込むが、この件には「船は暗礁に乗り上げていない。船頭は何人かいるが…」と人ごとのようだった。IOCとの約束事であり、即刻リーダーシップを発揮すべきだ。

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