【越山若水】ナスにキュウリにトマト。夏野菜の時季は心苦しい。近所から頂き物をすることが多いからだ。お返しをと慌てたところで気の利いた物はなく、ただ礼を言うばかり▼誰も見返りなんか期待してはいない。田んぼも畑も持たない勤め人の家庭をおもんぱかってくれただけだ。お返しを渡せば「水臭い」と怒られるかもしれない▼こうした近所付き合いを経済的な視点で考えてみれば―。なかなか興味深いインタビュー記事をネットに見つけた。題して「田舎の『タダ』は『無料』ではない」▼記事はこう指摘していた。都会からの移住者のなかには、物を頂くと0円で手に入ったと勘違いする人もいる、と。都会は相手にカネを払って関係が終わるが、田舎は違う、と▼等価の物でなくていい、何かをくれた人に対してでなくてもいい。できる範囲で誰かにお返しをする。「お互いさま」の心で成り立っているのが田舎の経済だ、というのである▼インタビューに答えているのは若新雄純(わかしんゆうじゅん)慶応大特任准教授。若狭町出身で鯖江市のまちづくりに関わっている人だから、親近感もあり共感した▼少し難しく言えば、都会が貨幣経済一辺倒なのに対し田舎はカネだけに片寄らない「善意のエコノミー」。識者によっては「冷たい経済」「温かい経済」と呼ぶ人もいる。世知辛い現代に必要なのは、後者。手前みそとは思えない。

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