【論説】空き家が全国的に社会問題化する中、今度は持ち主不明の土地問題が浮上してきた。推計の段階だが、民間の研究会によると、所有者不明の土地は全国で約410万ヘクタールに上り、九州の面積を上回るというから驚きだ。

 登記された全国の土地のうち20・3%が不明で、種類でみると林地が25・7%、農地18・5%、宅地14・0%。土地の資産価値の高い大都市部ほど少なく、中山間地を抱える地方ほど高いとされ、県内でもかなりの面積が所有者不明になっている可能性が高い。

 不明とされるのは、不動産の登記簿に現在の所有者が記載されず、調べても誰が所有しているのかすぐに判明しなかったり、判明しても連絡がつかなかったりするケース。自治体による固定資産税の徴収のほか、再開発や道路建設、農地の集約化、災害復旧などに影響が出る。

 現に東日本大震災の被災地ではこうした土地があるため、計画変更を余儀なくされた事業も多いという。所有者を捜す膨大な時間や費用を使うより変更した方が現実的と判断されたのだろう。ただ、中には事業中止に至るなど深刻な事態も招いている。

 背景には、不動産の登記が任意であることが大きく、地価が下落し利用価値も低下した林地や農地を相続しようという意識も希薄化。特に戦後、地方から都会へ移った人たちは、放置したり登記しなかったりする傾向が強まっている。名義変更の手続き費用や固定資産税の納入などもネックになっているという。

 福井市内に住む知人からこんな話を聞いた。将来の相続のことを考えた父親が所有する山林の登記を調べたところ、思っていた場所とは違い、名義も先々代のままになっていた。このため相続放棄を求め、県内外の親戚20人近くを訪ねたとのこと。知人は「もし親が亡くなった後だとしたら、お手上げだった」。

 今後、地方から都会へ移った「不在地主」らも代替わりの時期に来ている。人口減少も相まって、所有者不明の土地が急増しかねない。開発や災害復旧などへの影響に加え、管理が行き届かずに景観や治安の悪化にもつながる。

 政府も先月閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」で不明土地に関し「必要となる法案の次期通常国会への提出を目指す」と危機感を強めている。

 まずは不動産登記をいかに促進するかだろう。登記の義務付け、手続き費用や固定資産税の減免も考えられる。また費用がかかるため相続したくない人もおり、そうした土地や所有者不明の土地を自治体や何らかの組織の管理に移す制度の導入も模索すべきだ。

 空き家に加え、土地までも「負動産」化が加速している。現在の土地制度は価格が上がり続ける「土地神話」に支えられてきたが、「お金を払ってまで要らない」「処分に困る」といった声が高まる以上、新たな制度の設計が早急に求められている。
 

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