検証試験で、車輪幅が切り替わる軌間変換装置を通過するフリーゲージトレインの試験車両=3月、熊本県八代市

 2023年春の北陸新幹線敦賀開業後に導入が計画されているフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)について国土交通省は14日、先行導入する九州新幹線長崎ルートでの22年度の運行開始は困難との見通しを明らかにした。同日開かれた専門家委員会で、実用化に向けた耐久走行試験の再開には新たな対策が必要とされた。長崎ルート用の車両開発の遅れに伴い、北陸新幹線への導入時期はさらに遅れることになる。

 専門家委の会合後、与党検討委員会が開かれ、対応を協議した。7月中に安全性やコスト面で導入は困難としているJR九州のほか、長崎、佐賀両県から意見を聴取することを決めた。会合後、委員長の松山政司参院議員は「8月中にも(FGT)導入の可否を含めた長崎ルートの整備方針を決めたい」と述べた。

 専門家委では、部品の改良によって車軸の摩耗は以前より改善したが、一部で大きく摩耗したため耐久走行試験の再開には新たな対策が必要との指摘があった。一般的な新幹線の2・5~3倍とされた製造や修理にかかるコストは、台車の部品を再利用するなどして1・9~2・3倍に圧縮できる見通しとなった。

 会合後、国交省幹部は「22年度の長崎ルート先行車導入は困難で、25年度の量産車による全面開業時も難しい。年単位で遅れる可能性がある」と説明した。北陸新幹線への導入に関しては「雪対策を施す開発方針は変わらないが、目下の課題は車軸の耐久性」とし、北陸仕様のFGT開発が遅れる可能性を示した。

  ×   ×   ×

 フリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)の北陸新幹線導入がさらに遅れることが14日判明し、福井県内関係者からは「早急に結論を出してもらわないと、敦賀開業後の利便性確保策を議論できない」といった声が上がった。FGT導入にめどが立たない状況が今後も続くため、「FGTではなく、フル規格による新大阪までの早期全線整備が本筋」との意見や、特急存続を求める訴えも聞かれた。

 北陸新幹線では、九州新幹線長崎ルートの車両をベースにした寒冷地仕様を敦賀―新大阪が開業するまでの暫定措置として導入し、北陸と関西を乗り換えなしで結ぶ計画。しかし、九州用の車両開発が難航しているため、2023年春の敦賀開業時には間に合わず、導入時期のめどは立っていない。

 14日に開かれた専門家委員会では、FGTの耐久走行試験を再開する時期などは示されず、先行きはさらに不透明になった。県新幹線建設推進課は「今後の開発スケジュールなどを、まずははっきりさせてもらいたい」と指摘。敦賀開業後の新たな利便性向上策を検討するためにも「北陸新幹線への導入の可否について、国などは早く結論を出してほしい」と求めている。

 県会は2月定例会で、敦賀開業後も福井まで特急を乗り入れるよう求める意見書を可決した。県会北陸新幹線整備促進議員連盟の山岸猛夫事務局長は「FGTの計画が持ち上がってから相当な時間が経過している。仮定のままでは敦賀開業後の利便性確保について議論できない。北陸導入の可否を一日でも早く決めてほしい」と語気を強める。詳細を確認し、今後の対応が必要な場合は知事部局との協議も考えていくとしている。

 県会に先駆け、特急存続を訴えてきた牧野百男鯖江市長は「また判断を先送りしている」といらだちをあらわにし、国は早くFGT導入を断念すべきだと強調。特急乗り入れをあらためて主張し「新幹線敦賀駅から在来線につながる引き込み線の予算獲得が必要。嶺北の自治体がまとまらなければ」と呼び掛ける。

 県内の政財界は、31年春の北海道新幹線札幌開業より早い新大阪までの全線開通を政府・与党に強く求めている。訴えが実現すれば、FGT導入が遅れるほどJR西日本は車両の使用期間が短くなる。このため牧野市長は「北陸新幹線ではFGTは暫定使用。維持管理費を考えると、JR西が車両を購入するのは難しいのではないか」とみる。

 一部県議からも「FGT導入が遅れれば、JR西は収支が合わないだろう。九州新幹線でFGTを導入するのは構わないが、北陸新幹線への導入は一刻も早く断念すべき。フル規格による早期整備が本筋だ」との声が聞かれる。

 JR西日本広報部は「内容を確認中で、現時点でコメントできない」としている。

関連記事
あわせて読みたい