【論説】九州北部を襲った記録的豪雨から1週間が経過。福岡、大分両県の中山間地域では29人が犠牲になり、なお20人超が行方・安否不明だ。被災住宅約690棟、約1300人が避難生活を余儀なくされている。平和で穏やかな山あいの生活を暗転させた自然災害は、全国いつどこで起きるか分からない。これも地球温暖化の影響だ。あの福井豪雨から18日で13年。災害列島の中で、命を守る手だてが喫緊の課題になる。

 空撮で明らかになったのは、山がズタズタに切り刻まれたような約40カ所にも及ぶ土砂崩れだ。緑豊かな山林資源が谷間の集落を急襲。河川氾濫の大きな原因となり、想像を絶する被害が出た。民家に押し寄せた大量の流木はいずれも樹皮がむけ、破壊力のすさまじさを物語る。

 原因は「線状降水帯」の連続発生。今月4日深夜からの豪雨は、九州北部に停滞した梅雨前線に向かって南西側から大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込んで山地に当たり、積乱雲が連続発生するメカニズムだ。

 2012年7月にも九州北部豪雨により、熊本、福岡、大分3県で30人の犠牲者が出た。14年8月の広島土砂災害(関連死含め死者77人)、15年9月の関東・東北豪雨(同14人)でも惨禍が起きた。こうした現象は低い山や都市部でも起きる。気象庁は大雨特別警報を出したが、局地的な大雨は予想以上の長時間にわたって降り続いた。

 被災地では川沿いの道路が破壊され、重機が入らず救助や捜索を阻んだ。この1週間で孤立地区は解消されたが、電気や水道などのライフライン復旧は遅れている。安倍晋三首相は一体何のために現地を視察したのか。政府は復旧事業の補助率を引き上げる激甚災害の指定を急ぐべきだ。

 悪条件が重なった災害とはいえ、今後の教訓とするためにも中山間地域の状況を詳細に把握し、実態を分析する必要がある。

 まず、なぜ大規模な崩落が発生したかだ。専門家らの調査では、山の岩盤表面が風化し、もろくなっている状況が指摘される。また大分県日田市の地区では表土崩落だけでなく「深層崩壊」だった可能性が高いという。大雨で大量の水分が地中に浸透、深い岩盤部から崩れたという分析だ。

 11年9月の紀伊半島豪雨では70カ所以上でこうした深層崩壊が発生し、計88人の死者・不明者を出した。

 被災地の山域では林業が盛んで美しい山容はスギやヒノキだ。だが、急斜面での規則正しい林立と放置された間伐材、水に浮く比重の軽さが時に脅威となることも肝に銘じたい。

 予期せぬ豪雨は今後も各地で続くだろう。被害を最小限に防ぐためにも詳細な地形・地質調査を進め、防災対策の強化、住民への周知徹底を望みたい。地域の被害を予測するハザードマップも見直す必要がある。 日ごろからリスクコミュニケーションの大切さを共有し「正しく恐れる」ことだ。常に「今度は当事者」という危機意識を持ちたい。
 

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