【越山若水】フランス文学者で評論家の鹿島茂さんは大学の教授でもある。フランス人が書いた古典的な名著で、自身のゼミで教材に使っている本をエッセーで取り上げている▼書名は「アメリカの民主政治」。1831年に若き裁判官アレクシ・ド・トクヴィルが米国各地を旅し、目にした政治や市民生活の特徴を詳細に記述したもの▼その中で上院と下院の議員の質を比較している。「下院というのは、唖然(あぜん)とするほどに劣悪な人間の集まりである。よくもまあこんな奴(やつ)がと呆(あき)れ返る連中ばかり」▼何とも痛烈な批判である。「対するに、上院にはアメリカの知性を代表するような卓越した人間が一堂に会している。この違いは一体どこから来るのか?」。その答えをトクヴィルはこう解き明かす▼下院は直接選挙だが、上院は間接選挙である。原因はこの1点しかない―。当時の上院議員はまず選挙人を選びその人が候補者を選考。その後に州議会で選出されたという▼鹿島さんはそこに「ふるい落としの原理」が働き、質が保たれたと見る。さて日本では暴言や失言、女性問題など資質が問われる議員が後を絶たない▼経済失速とともに政治は停滞し、選挙は劇場型へと様変わり。「○○チルドレン」と呼ばれる新人が大量に誕生した。渦中の人物はまさにその世代。トクヴィルであれば「ふるい落としの洗礼」を要求するだろう。

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