【論説】政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡る衆参両院の委員会による閉会中審査が開かれた。野党側の参考人として出席した前川喜平前文部科学事務次官が、「総理のご意向」などと記された文科省の文書の信ぴょう性を改めて証言し、背後に首相官邸の働きかけがあったと強調した。

 一方、政府側はプロセスに「何ら問題はない」、関与の肝心な部分は「記憶にない」などとこれまでの答弁を繰り返すのみで、安倍晋三首相が通常国会の閉幕時などに述べた「丁寧な説明」からは程遠いと言わざるを得ない。

 とりわけ不誠実なのは、この問題の渦中にいた官僚らを野党が出席させるよう求めていたのにもかかわらず、「異動」などを理由に欠席させたことだろう。これでは「加計隠し」のための異動だったとしか言いようがない。

 こうした中での審査は、かえって前川氏の証言の真実味を際立たせる結果にもなったといえよう。

 特に文科省が「確認できなかった」とした「10/7萩生田副長官ご発言概要」について、前川氏は「担当課から説明を受けた際に受け取った文書に間違いない」と断言。文書には「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか」などとあり、その後、地域限定での新設を認めた「加計ありき」をうかがわせるものだ。

 これに対して、萩生田光一副長官は10月7日に文科省幹部と会ったことは認めたものの、発言については「記憶はない」とした。だが、他の文書にも内閣府側に沿ったとされる萩生田氏の発言があり、真っ向否定するだけの根拠がないままでは、文書の方がよほど説得性を持たないか。

 前川氏は加計学園の計画が「獣医師の需要動向」など新設の4条件が十分検証されなかったと指摘。規制緩和と称しながら「広域的に存在しない地域に限り」「平成30年4月開学」と規制し、「京都産業大の計画との比較検証も不十分だった」と、改めて「行政がゆがめられた」と強調した。

 さらには「総理は自分の口から言えないから、自分が代わって言う」と圧力をかけられた和泉洋人首相補佐官を“キーマン”に挙げた。働き掛けを受けたという学園理事の木曽功内閣官房参与はむろん、理事長の加計孝太郎氏らの証人喚問も必要だ。

 菅義偉官房長官は「国会が決めること」と答弁したが、幕引きは許されない。審査は安倍首相の不在のもとで行われた。そのことで不信感を募らせた国民も少なくないはずだ。

 「記録はない」「記憶もない」を繰り返す前に、記録を徹底的に洗い出し反論すべきだ。いつまでたっても疑念が拭えない状況は、安倍政権自らを追い込むことにほかならない。それができないならば、かねて前川氏が指摘していたように第三者による調査に委ねる方法もある。「逃げるが勝ち」を国民は許さない。

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