生徒に行書の書き方をアドバイスする指導員の松浦さん(左)=6月、福井県坂井市坂井中

福井県教委が作成したDVD教材で正しい筆遣いを学ぶ児童たち=6月、福井県勝山市荒土小

 書写・書道教育の充実に向けて、福井県教委は本年度から、福井県内の書道団体と連携し、小中高校の授業や部活動に指導員の派遣を始めた。授業支援のためのDVD教材も作成し、全公立校に配布。「書道の実技が苦手な先生が少なくない」(福井県教委)なか、教員の“強い味方”になっている。

 「行書は楷書と筆順が違うからね」「紙の上で筆を持ち上げず連続性を意識して」。先月、坂井市坂井中2年5組で行われた書写の授業。行書の書き方を学ぶ内容で、指導員として福井県書作家協会会員の松浦悦子さん(66)=福井県あわら市=が訪れた。

 藤田直浩教諭(50)が、行書の丸みを帯びた形や点画の省略について説明した後、松浦さんが課題の「紅花」の手本を実際に書いて披露。生徒が書き始めると、松浦さんは机の間を歩きながら、筆を持つ腕の位置に注意することなどをアドバイスした。

 生徒の塚田瑛斗さんは「(松浦さんが)書いて見せてくれるので分かりやすかった」と行書への理解を深めた様子。藤田教諭は国語科の教諭だが「国語学」が専門で書写指導はやや苦手だと言い「字は上手ではないし、書道部員の生徒らに細かい点を聞かれると正直困る。専門の人に来ていただけると助かる」と話す。

 本年度、同校と金津小に派遣される松浦さんは「子どもたちが理解しやすいよう、先生の説明を補足するなどしてサポートしたい」と意気込みを示した。

 県教委は、白川文字学を生かした漢字教育や文字文化への理解促進の一環として、書写・書道教育に力を入れている。ただ「毛筆で文字を書くことが苦手で、技術指導に不安を抱えている教員は少なくない。手本を渡し、手本通りに書きなさいと指導する例もあるようだ」(同教委)。昨年度、全小中学校を対象に行ったアンケートでは、指導者派遣に対する教員のニーズが高かったという。

 現在、書写の元教員ら95人が指導員として登録。小学校では年30時間の授業のうち6時間、中学は20時間のうち3時間を担当する。本年度は小学校55校、中学校14校、高校7校に派遣される予定だ。大学教授らを招いた教員対象の指導力向上研修会も年度内に18回計画している。

 DVD教材は「穂先の方向」「運筆速度」など四つの視点から筆遣いを丁寧に解説するもの。全部で約70分の内容で、悪い例、正しい例など細かく目次分けされており、授業の内容に合わせて、児童生徒に見せたい項目を選んで使うことができる。

 6月末に勝山市荒土小の4年1組で行われた公開授業では、児童たちが「はらい」や「まがり」を、DVDを見ながら学習した。視聴前の試し書きと、最後のまとめ書きでは、格段に上達した児童もみられた。

 吉川伊織教諭(28)は「これまでは、水筆で書く水書板を児童の前で示し筆遣いなどを説明していたが、DVDがあると2人で授業できる感じ。児童と向き合ったり、丁寧に指導したりする時間が増えた」と効果を感じていた。

 DVDの中で“先生役”を務めた県教委生涯学習・文化財課の小谷寛幸さん(36)も荒土小の授業を見学し「先に『悪い例』を児童に見せ、正しい書き方を考えさせる授業。DVDの活用法として参考になった」と感心した様子。書家でもある小谷さんは「手書きの文字は学習の基礎。しっかりと書ける子どもを増やし、書道王国・福井を支える人材が育っていけば」と期待を込めた。

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