【論説】不要になった携帯電話やデジタルカメラなど小型家電に含まれる金属を再利用し、2020年東京五輪・パラリンピックのメダルを作ろうという取り組みが始まっている。名付けて「都市鉱山からつくる! みんなのメダルプロジェクト」。

 東京五輪の大会組織委や環境省などが協力を呼び掛け、県内でも先月までに全市町に回収ボックスが設置され運動を後押ししている。プロジェクトの背景とその意義を考える。

 ■5千個全てを目標に■

 近代五輪は「スポーツ」と「文化」をうたった国際的なイベントで、1896年にアテネで第1回大会が開催された。1990年代以後は「環境」の視点が加わり、自然や生態系への配慮、エネルギー・資源の節減、持続可能な街づくりなどが重要視されてきた。

 その一環として廃棄される家電に内蔵される金属資源、いわゆる「都市鉱山」が注目された。相当の埋蔵量がありリサイクルすればメダル作製が可能となる。2012年ロンドン大会で一部で実施され、続くリオ大会では銀と銅の3割で回収素材が使われたという。

 日本は東京五輪・パラリンピックで必要なメダル総数約5千個をリサイクル金属で調達する計画。もちろん全てのメダルを、しかも国民運動として取り組むのは世界で初めてで、持続可能性を目指す五輪を強くアピールできる。

 ■停滞するリサイクル■

 ロンドンのメダル(1個400グラム)を想定し、5千個分の原材料を推定すると金10キロ、銀1233キロ、銅736キロ。金メダルは銀にメッキを施すため銀の数量が必然的に多くなる。製造時の歩留まりを考えると、4倍程度の確保が必要になる。

 金属類が多く使われる携帯電話だと、2千万~3千万台を集めなければならない。これまでの再資源化の実績でどうにか達成できそうだが、決して安心できる状況とはいえない。

 なぜなら廃棄金属の回収自体が思うほど進んでいないから。13年度施行の小型家電リサイクル法は有用な金属類の再利用を促し、国内や海外での不法埋め立てや不適正処理による環境悪化を防ぐ目的。携帯やスマホ、ゲーム機、ビデオ、電源アダプターなど28品目が対象だ。

 1年間に使用済みとなる小型家電は約65万トン。環境省は自治体などを通じ回収を推進し、15年度の目標を14万トンと設定した。しかし実績は約6・7万トンとわずか半分足らず。こうした現状を踏まえれば、メダルプロジェクトが持つ意義は大きい。

 ■資源活用を定着化へ■

 まず何より東京五輪の機運を盛り上げる。ほんの少しでもメダル作製に貢献し、環境五輪の一翼を担うことで「国民参加」意識がより強くなる。

 同時に、小型家電リサイクルを促進する起爆剤にもなる。環境やリサイクルの有用性に気付くことで、自治体の回収事業に弾みが付く可能性も高い。まさに一石二鳥といえる。

 県内では全17市町が「携帯電話専用回収ボックス」を20カ所に設置した。しかし携帯・スマホ以外も回収できるのは福井、坂井、鯖江、越前市と越前町の5市町だけ。取扱品目は限定される。また通常のリサイクル回収も全県実施でなく、年1回の集団方式の自治体も多い。

 県循環社会推進課では、今回の運動を通じごみ分別が徹底されれば「小型家電だけでなくプラスチック、雑紙など全体のリサイクル率アップやごみの総量減にもつながる」と期待する。

 メダルプロジェクトをきっかけに、資源活用の意識が県民に定着し財産として残ることが望ましい。

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