【越山若水】世界で一番短い手紙といえば、フランスの作家ビクトル・ユゴーの話が有名だ。1862年に刊行した「レ・ミゼラブル」について出版社に送った通信文である▼届いた手紙を開けると、便せんの真ん中に「?」とだけ書かれていた。相手の気持ちを瞬時に察した編集者は、迷うことなく「!」と書いて送り返したという▼念のため解説すれば、執筆後に海外へ旅立ったユゴーは小説の評判が気になった。そこで手紙で確かめた。「本の売れ行きはどうだい?」「素晴らしいですよ!」▼実際のところ数日で売り切れたらしい。大作家も直接的に聞くのは気が引けたのだろうが、何ともユニークかつユーモアにあふれた手紙だ。ただ互いに信頼し合える間柄だから可能なやりとりである▼この逸話とは裏腹、こちらはたった一言でなく丁寧な話し合いが求められる。あす開かれる閉会中審査は、加計(かけ)学園の獣医学部新設をめぐる官邸の関与が議論の対象である▼一番の注目は「総理のご意向」と書かれた内部文書の存在を公言した前川・前文科次官の参考人招致。従来の政府答弁は得心が行くレベルでなかった▼前川氏の発言に政府はどう応じ、野党の追及にどう反論するのか、国民は固唾(かたず)をのんで見守っている。安倍首相の不在は不本意だが、高飛車な政権の姿勢に不信は募る一方。「?」「!」の応酬では済まされない。

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