福井しあわせ元気大会に向けた研修会で手話を教わるボランティア=6月18日、福井県大野市の結とぴあ

 手指の形や位置、動きや表情などで情報を視覚的に表現する手話。来年の福井しあわせ元気国体・福井しあわせ元気大会(全国障害者スポーツ大会=障スポ)に向けては、手話通訳などの情報支援ボランティアの養成研修会が始まっているが、一部の単語は全国で使われる「標準手話」を使うよう指導されるという。手話にも標準語や方言があるの?

 「手話にも“方言”があるんですよ」。福井県ろうあ協会事務局長で県聴覚障がい者協会の竹原晴彦さん(38)=福井県越前市=が教えてくれた。物などを指す単語の表現が、地方によって異なる場合があるという。

 「例えば水。右の手のひらを上に向けて左から右へ波打たせるように動かすのが標準です」。しかし各地には、井戸の手押しポンプを両手で上下に動かしたり、水道水の蛇口を右手でひねるなど別の“方言”がある。福井県内では「水」は、開いた右の手のひらを右ほほに当てて前後に動かす動きで表現するという。両手ですくった水を飲むしぐさが簡略化されたようだ。

 他にも、茶や緑といった色名をはじめ「挙げたら切りがないほど多い」と竹原さん。「大人になって行動範囲が広がり、県外の人と関わる中で、自分が福井で使っていたこの表現は方言だったんだと気付いた」と振り返る。

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 元気大会関連の単語では、例えば「体育館」は、嶺北では、広げた両手の指を組み合わせる。福井市体育館の象徴的な屋根の鉄骨の形から生まれたと考えられるが、嶺南では通じないという。

 さらに嶺北でも、福井市と奥越、丹南など地域でも異なる“言葉”はあるという。福井県ろうあ協会の林恵美さん(44)は「手話はろう者が思いを伝え合うために表現方法を工夫し、地域で育んできた言葉であり、受け継がれてきた文化です」と話す。ろう者のコミュニティーの中で生まれた表現言葉が継承されたと考えられ、手話を見れば、どの地域の人なのか、さらには誰に手話を習ったのかまで分かるという。「だから手話は、奥深いでしょう?」と笑顔で話す。

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 2011年8月に公布された改正障害者基本法で手話の言語性が法律で裏付けられた。手話は視覚で伝える「言語」であるとして、使いやすい環境整備を県や市町村の責務とする「手話言語条例」の制定が全国で相次いでいる。13年の鳥取県を皮切りに6月30日現在で13県79市9町の101自治体に上っている。鳥取県ではタブレット端末を用いた遠隔通訳サービスを提供し、全ての公立小中学校で手話を学ぶ機会を設けている。

 福井県では今年5月、県議会が県手話言語条例(仮称)の制定に向けた検討会議を設置。県は障害の有無にかかわらず、全ての人が共に生きる社会の実現に向けた新たな条例の制定を目指す策定委員会を同月、立ち上げた。

 「鳥取ではあちこちで手話ができる人に出会うなど、まち全体が変わってきているようだ」と竹原さん。「手話は聴覚障害者を助けるものでなく、一つの言語。条例という後押し、さらに福井国体・障スポを契機に、手話が当たり前の社会に近づけばうれしい」

 
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