東大卒で元一流企業社員でありながら「専業主夫」となった堀込泰三さんが今回の主人公だ

 毎週月曜夜7時から放送中の新番組「結婚したら人生劇変!〇〇の妻たち」(TBSテレビ系)。人気番組「プロ野球戦力外通告」「プロ野球選手の妻たち」を手掛けるスタッフが、夫を支える妻の姿を通して、夫婦の愛と葛藤に迫るドキュメンタリーだ。

 これまでの放送の中で、ひときわ異彩をはなった夫婦がいる。堀込泰三さん(39)と妻・香苗さん。タイトルどおり、「妻」をメインに着目する同番組の中にあって、主人公は夫の泰三さんである。なぜなら泰三さんは東大卒の元一流企業社員でありながら、会社を辞めて家事・育児をこなす「専業主夫」なのだ。

 ■専業主夫は毎日大忙し!?

 泰三さん、香苗さん夫婦は現在、長男の峻平くん、次男の耕平くんとの4人家族で暮らしている。泰三さんは専業主夫歴10年の「ベテラン」だ。

 朝は朝食の準備から始まり、次男を保育園へ送る。長男の小学校のPTA活動にも参加。昼は掃除、夕方は1円でも安くいい食材を求めてスーパーへ。夜は夕飯を作り、子供を寝かしつける。スケジュールはびっしり。そんなパパの主夫ぶりに、子供たちの意識は180度逆転。ママが帰宅すると、「パパ!」と駆け寄っていく一幕もあった。

 なぜ東大卒のエリートが専業主夫になったのか。堀込夫婦は千葉県の進学校、渋谷幕張高校の同級生だ。高校3年生のときに交際がスタートし、泰三さんは東京大学工学部に現役合格。専攻は航空宇宙工学科で、モノづくりに情熱を燃やし、車のエンジン開発のために大手自動車メーカーに就職。29歳のときに結婚し、翌年に長男が誕生した。

 東大卒夫・泰三さんが一流企業のエリート社員だった一方で、妻・香苗さんは浜松の医科大学を卒業後、東京大学の研究員として勤務。そんな中でのご懐妊といううれしいニュースだった。

 この長男の出産こそが、夫婦の人生が劇変するすべてのキッカケだった。

 香苗さんは育休を取ろうとしたものの、自らの立場は契約社員ならぬ契約研究員。通常の育休制度が適用されず、休暇がほとんど取れないという事実に直面する。やむをえず退職を考えた香苗さんだったが、自身が行う最先端医療の研究を病の早期発見・治療に役立てたいという夢があったため、踏ん切りがつけられない。

 そんな悩める妻に夫・泰三さんは「自分が2年の育休を取る」と提案した。泰三さんの勤める一流企業には育休制度があったのだ。もちろん、制度があったとはいえ、育休を使った男性社員は当時、1人もいない。風当たりは相当のものだった。しかも、働き盛りの30代が職場を2年も離れれば、積み上げてきたもののすべてを失うといっても過言ではない。

 しかし、泰三さんはこう考えていた。

 「出世とかはそんなに気にしてなくて、妻がどれだけ仕事が好きかっていうのはわかっていたので。仕事を妻が辞めるのか、こちらが休むのかのてんびんですから、比べたらこちらが休みをとるほうがよかったということです」

 こうして東大卒夫は2年の育休を取った。その後、妻の香苗さんはますます研究に没頭し、1年後にはその業績が認められ、1年間のアメリカ勤務が決定する。育休中の泰三さんも一緒に渡米し、妻を支えた。そして妻の任期も終わり、帰国をしようとした、そのときだった。

 なんと、妻の研究が想像以上に高く評価され、2年間のアメリカ勤務延長が決まったのだ。一方、このタイミングで、夫の育休は終了。妻はアメリカで働きながら子供を育て、夫は1人、日本に帰国し、会社に復帰することとなった。家族バラバラの生活が続く中で、東大卒夫は思った。

 「寂しさとつらさしかなかったんですね。妻のほうも多分、つらかったんじゃないですかね。家族がバラバラでいるくらいだったら、会社を辞めてもいいから一緒に暮らしたほうがいいんじゃないかっていう感じですね」

 こうして夫は会社を辞めることを決意。東大卒夫は、専業主夫となった。

 ■東大卒の専業主夫はつらい!? それとも楽しい!?

 エリート街道を自ら捨てた専業主夫。そんな泰三さんの生活をのぞいてみた。「男性に家事が、うまくこなせているのか?」と思う読者も少なくないかもしれない。ところが、泰三さんの料理の腕前は、専業主婦も顔負けの見事な手さばき。実は家事の中でも料理が特に好きだという。

 その理由は「洗濯や掃除など、家事の多くはマイナスをゼロに戻す作業だが、料理はプラスを生み出す、クリエーティブな作業だ」(泰三さん)というのだ。もともと東大工学部で磨いたモノづくりの精神が、料理に生きているという。

 

 「ママ友とのお付き合いはうまくやれてるのか?」という点が気になる読者もいるだろう。泰三さんが育休を取った10年ほど前は、まだイクメンという言葉すらなかった。そのため、昼間から子供を抱えて歩いていると、けげんそうな目で見られることが多かった。公園に行っても、いるのは女親ばかり。そこには東大受験以上に高くて分厚い壁を感じたという。

 「本当にママの世界って勝手に思い込んで、入りにくい雰囲気を感じてしまって、逃げるように帰ってきたのを覚えていますね」

 それが今では、ママ友とランチ会をするまでになった。東大卒夫は、意を決し自分からママ友の世界に飛び込んでいったのだ。育児の悩みを共有することで、子供のいい病院情報や献立の相談まで、気軽にできるようになったという。男女の壁も乗り越えていた。

 ■東大の同級生が「うらやましく」も引け目はない

 「東大の同級生に対して引け目を感じていないのか?」。泰三さんにそんな思いを抱く読者もいるだろう。

 泰三さんは自ら選んだ選択に後悔はしていない。

 取材班は泰三さんが東大航空宇宙工学科の同級生たちと会う日に、同行した。やはり日本最高峰の大学を出たとなれば、同級生たちもビジネスの世界で活躍している人たちが多い。某電機メーカーで人工衛星の開発をする人がいれば、人工衛星を作るベンチャー企業の役員、さらには国の宇宙開発機関勤務員など、宇宙関係の第一線で働く。

 会話は当然、「宇宙」を語り合うというスケールの大きな内容。泰三さんはそれを「うらやましい」と言いながらも、はっきりとこう話してくれた。

 「でも、(専業主夫になって)会社員時代ではわからなかったいろんなことが知れて、いま充実していて楽しいし、幸せな生活を送らせてもらっているなと思います。今の妻じゃなかったらこんな経験はできなかったと思いますし、やっぱりよかったなと思いますね」

 そんな東大卒子育てパパは今、イクメンのお手本になるべく講演会などでの活動も行い、著書も出版。そんな夫に妻の香苗さんも「感謝しかないですね。女性が社会進出するためには、ものすごく貴重な存在なんじゃないかと思います」と話す。

 凝り固まった常識にとらわれず、夫婦にとって最良の選択をしていったらこうなった。ただ、それだけのこと。堀込夫婦は新しい夫婦のスタイルを教えてくれた。(TBSテレビ『結婚したら人生劇変!〇〇の妻たち』取材班)

■東洋経済オンラインの関連記事■
元大関「魁皇」の妻が歩む波瀾万丈すぎる人生
天才騎手と人気アナ夫婦が向き合う覚悟
「猫ひろし」売れない芸人に賭けた妻の真実
■福井新聞ONLINEの関連記事■
宿題丸写しでもハーバード大合格
隠れアスペルガー症候群は天才かも
コーヒーの飲み過ぎは何杯から?