だれでも縦覧できる政務活動費の収支報告書=2016年、福井市役所

 福井市議が2016年度に政務活動費を使って行った県外視察で、20件超の報告書が全文同じだったことが4日、福井新聞の調べで分かった。視察の参加者で意見を集約し、統一見解としてまとめたものを各議員が提出する体裁を取っていた。

 視察報告書は、各議員が政務活動費収支報告書に添付。議会事務局によると、視察報告書の添付は義務付けられておらず、視察を行っても報告書を添付していない場合も多かった。

 保守系最大会派「一真会」の全11人が3月、市東京事務所や農林水産省などを訪れた報告書では、参加した市議の名前を全員分記載し、「以上11名の意見集約」と断りを入れ、質疑応答などを書いており、議員それぞれが同じ報告書を添付している。第2会派の志政会、市民クラブでも、会派の視察で同様の報告書を提出していたものがあった。

 取材に対し複数の議員が「視察後に例会を開いて意見を集約し、参加した議員の思いをまとめたものを出している。決して使い回しではない」と説明。「報告書を書くことが重要なのではなく、議員それぞれが見て聞いて感じたことを本会議の一般質問や、委員会で生かすことが大事。視察内容は議会活動で有効活用している」と述べた。

 福井市会では15年度の政務活動費収支報告書でも、32人中26人が同様の方法で報告書を提出していた。

 政務活動費は議員1人当たり月15万円、年間180万円が交付されている。福井新聞の調べでは、市議32人が2016年度に使った政務活動費は4827万2千円、交付額5760万円に対する執行率は83・8%となった。8人が満額180万円を使い、最低は84万3千円だった。

 

 ◇政治資金オンブズマン共同代表の上脇博之・神戸学院大法学部教授(憲法学)の話

 まず複数の議員で視察する必要があるのか疑問だ。会派で行くなら、担当する委員会ごとに行き先を分担し、政務活動費は効率的に使うべきだ。仮にさまざまな視点が必要だというなら、事前に誰がどの視点でチェックするかを決めて視察し、報告書も一人一人が書かなければならない。連名でも誰がどの部分を書いたかが分からなければ、一人だけで書くこともあり得る。

 

【取材ノート】

 政務活動費に厳しい目が注がれているのは、本当に意味のある活動に使われているのか疑問を持たれているからだ。

 インターネットで多くを調べられる時代とはいえ、自分の目で現場を確認し、関係者の生の声を聞く視察の意義は大きい。だが、神戸学院大の上脇博之教授が指摘するように、大人数で行くことに問題はないのか。「みんなで行くから親ぼく会や観光かと疑われる」と上脇教授はいう。

 福井市会の「政務活動費運用マニュアル」に、報告書の添付義務は明記されていない。同一の報告書を提出している視察はまだしも、報告書がなく、視察先から提供されたと思われる資料のみ添付されているケースもあった。マニュアルに違反してはいないが、マニュアルは議員自身がつくっている。

 同一会派10人で広島県まで足を運び、森林資源活用に関する木質ペレットなどについて調査した視察の報告書は、A4判1枚のごく簡単な内容だった。10人全員が意味のある視察になったと信じたいが、報告書でそれを証明できていないことに問題があるのではないか。

 ある議会関係者は、運用マニュアルも報告も「性善説に基づいている」と解説するが、行政の予算に無駄などがないかチェックする役割を担うのが議会。税金が使われている自らの活動には無駄がないのか。緊張感を持つ必要がある。

 

 

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