【論説】これもまた「安倍1強」のおごり、緩み体質の表れなのだろう。

 稲田朋美防衛相が自民党都議選候補の応援演説で「防衛省・自衛隊、防衛相、自民党としてもお願いをしたい」と問題発言した。撤回し「職務を全うしたい」と述べたが、野党は「自衛隊を政治利用するものだ」として批判を強めている。与党や自衛隊関係者はむろん、県内からも懸念の声が相次いでいる。

 こうした発言は、安倍晋三首相自身にも通じるものがあるのではないか。

 最近では、獣医学部の新設に関して「日本獣医師会からの要望を踏まえ1校に限定して認めたが、中途半端な妥協が結果として国民的な疑念を招く一因となった」として「速やかに全国展開を目指す」と一気に方向転換する発言をした。

 閣議決定で獣医師の需給見通しなど4条件をクリアする必要があるのにこれを無視した発言だ。そもそも国家戦略特区制度は、地域限定で成果を確かめた上で全国に広める狙いがある。1校目の加計(かけ)学園の計画は大学の設置許可もなされていない段階。「加計隠し」のために行政のあり方を変えてしまおうとするのは無謀と言わざるを得ない。

 憲法改正でも党総裁と首相の立場を使い分け、国会では「新聞を熟読して」と述べるなど説明責任を尽くさない。年内に自民党案をまとめるとしていたのを、急きょ秋の臨時国会で示す考えを表明。熟議を求めていたのに自らがそれをぶち壊し、混乱を招いている。

 これは政権の体質にもいえる。加計学園問題では、菅義偉官房長官が出てきた文書を「怪文書」と言い放った。文書の存在が確認されたのに「『総理のご意向』などと誰も言っていない」(山本幸三地方創生担当相)と真っ向から切り捨てるありさまだ。

 山本氏は「一番のがんは学芸員」と述べ物議を醸した当人だ。4月には東日本大震災を巡り「まだ東北でよかった」と失言した今村雅弘復興相が更迭された。「共謀罪」法案では金田勝年法相が意味不明の答弁を繰り返し、与党は委員会採決を省き「中間報告」という禁じ手で本会議で強行可決させた。

 こうした高圧的とも映る姿勢が議員にも連鎖したのか。むしろ資質の問題でもあろうが、秘書に暴言を吐き、けがまでさせた2回生議員はすぐさま離党。大量当選を果たした2回生議員は不倫スキャンダルや失言、金銭トラブルなどで1人が議員辞職、他も離党や役職辞任に追い込まれた。

 内閣支持率の急落は、こうした安倍政権の強硬かつ不誠実な姿勢を国民が見抜き始めた結果といえよう。

 今回の防衛相発言に対し菅長官は「説明責任を果たし誠実に職務に当たってほしい」と述べ、安倍首相も続投を指示した。稲田氏は森友学園問題や南スーダンPKOなどを巡り、謝罪に追い込まれたり、批判を受けたりした「過去」もある。真摯(しんし)に説明責任を果たすべきことは十分分かっているはずだ。

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