海外向けを意識した和紙製品を手に思いを語る柳瀬晴夫社長=福井県越前市

 自然な丸みが温かみを感じさせる和紙の小箱。手漉きならではの風合いと、洗練されたシンプルなデザインが目を引く。製造・販売は、今回の外国人ツアーの見学先となる創業41年のやなせ和紙(福井県越前市大滝町)。商品名は「モルン」「コッブル」の2種類で、スウェーデン語でそれぞれ「雲」「石」を意味する。海外向けを意識し、東京のデザイナーと連携して挑戦した製品だ。「かつて主力だったふすま紙の需要は落ちる一方。新しい需要をつくっていかないと」と柳瀬晴夫社長(61)。後継者の確保も産地の課題となる中、三男が3代目を継ぐことになった。だが「うれしい半面、大変な時代だからもろ手を挙げて喜べない」と言う。ツアーでは、産地の底上げに向けて「和紙に興味がある外国人の反応を直接見て、売り方を考えるヒントを見つけたい」と考えている。

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 ツアーで紙漉き体験を指導するのは、卯立の工芸館に勤める産地最年少の伝統工芸士、村田菜穂さん(40)。20年前、全国でも多種多様な紙を生み出す産地の奥深さに引かれ、京都市から越前に飛び込んだ。「買い手の要望に応えるため、その都度技術を磨いてきたのが越前の職人の魅力」。丈夫で長持ちする天然素材の和紙を追究し続けながら、「洋紙と和紙の区別もつかない子どもが増えている。選ぶのは消費者。品質やこだわりを伝えて、使う人の目を肥やしていかないと、伝統がなくなっていく」と危機を訴える。

 1500年の歴史を持つ越前和紙の産地・越前市五箇地域。明治政府が発行した国内初の近代紙幣「太政官札」の用紙は、この地から生まれた。岡太神社・大瀧神社には、紙漉きの技を伝えたとされる日本唯一の紙祖神・川上御前が祭られている。訪日客を引きつけるだけの歴史と風土が根付いているのは間違いない。今回のツアーでは、その価値をじかに感じてもらう。海外発信を、いかに産地にとっての活力につなげるかを問う機会にもしたい。

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