【越山若水】蓄音機、白熱電球、活動写真などを開発した発明王、トーマス・エジソン。偉大な天才だと思われるが、実は全てが彼のひらめきの成果と考えるのは間違いらしい▼例えば電球の場合、1879年にエジソンは確かに特許出願を提出した。しかしその80年前から何人もの科学者が同じアイデアで光を放つことに成功している▼あえて手柄を挙げれば、燃えにくい炭化竹フィラメントを採用したこと。加えて巧妙な宣伝力を発揮し、電灯の全国網を立ち上げると報道機関に売り込んだことだ▼希代の発明家に厳しいこの解説の出所は「世界をつくった6つの革命の物語」(スティーブン・ジョンソン著、朝日新聞出版)である。ただエジソンの別の才能を高く評価していることを紹介しよう▼彼には「マッカーズ(仲間)」と呼ばれる共同研究者がいた。物理学者、機械工、金属加工職人など専門分野も国籍も多様な集団で、そのチーム力が直感的着想を形にした▼こうした見方を当人も否定はしなかった。「私を『発明家というよりアイデアを吸収するスポンジ』と表現するのはきわめて正しい」と話したという▼発明の歴史を振り返るとき、一人の天才の資質に集約されがちだ。しかし詳細をたどれば、多くの人の知恵と汗が土台にある。エジソンの栄光も単に魔法の物語ではなく、何よりチーム力のたまものと知るべし。
 

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