【越山若水】イラストレーターの益田ミリさんにとって父親は「わかりやすくて、わかりにくい」存在(「オトーさんという男」幻冬舎文庫)。そして「ちょっと面倒くさい」▼改まった場に出掛け、他人の靴を履いて帰ってくる。誰かが迷惑しているのに「そんなん気にしてへんもん」。いや、それは気にしてくださいよ、と益田さん▼家事は一切しないはずがあるとき自分が晩ご飯を作ると言いだした。困ったのは益田さん姉妹だ。短気なオトーさんは少しでも思い通りにならないと怒りだすから▼外出した母の代わりに、必死に働いた。ジャガイモを牛乳で煮る料理は割合、おいしくできた。が、益田さんたちは手伝いに疲れ、母も後片付けに疲れ、父だけが上機嫌だった▼そうそう、こうなるから嫌なのよという声が聞こえてくる。先ごろ内閣府が始めた「おとう飯(はん)」キャンペーンである。もっと男性も料理をという狙いだが案外、評判が良くない▼立派な料理でなくても「おとう飯」ならいい、とキャッチコピーにある。だったら「おかあ飯」は立派じゃないといけないの? との声も上がる▼世はいまだに男性優位、という指摘だろう。それを認めつつわが身を振り返れば、男は不器用でいけない。益田さんの父上も、大変な娘思いなのに伝えるのが苦手。でも、そこは大目に見てもらえないかと思う。「父の日」に免じて。

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