■硬水と軟水の味覚の差は・・・

さてさてお待たせいたしました。抽出液の味覚官能検査をいたしましょう。まずは、軟水コーヒーの方から。

普段から飲み慣れていますから、おいしくいただきました。水道水を浄水したものよりも心なしか口当たりがまるい感じです。香りもなかなか。酸味、苦味、甘味など適度なバランスです。

では、いよいよ硬水コーヒーに。うーん、あれれ・・・ 味が軽い(薄い)水のときにあった化学調味料的味覚は多く感じ取れませんが、軟水コーヒーと比べて味が弱い、全体にすっぽ抜けた感じです。特に苦味が強調されているといったことはありません。香りも弱く紙っぽい臭いでした。

それでは、前編で紹介した疑問点A、B、C、Dについて、まとめてみましょう。

A 硬水では焙煎度合いが浅い豆を使うと適切な濃度が得られない。
・浅煎り豆どころか後の実験で深煎り豆でも抽出濃度が薄いことがわかりました。

B 酸味が出にくく苦味が強調される。
・特に苦味が強調されるのではなく全体に平坦で軽い味になりました。
 
C ミネラル分によるペーパーフィルターの目詰まりで抽出不良をおこさないか?
・どちらも抽出作業はスムーズで、ペーパーフィルターの目詰まりはありませんでした。ミネラル分子は、ペーパーフィルターごとき大きな穴は簡単にすり抜けていくのです。もっとも、ポットの底に沈殿した白いものはペーパーフィルターで漉せるほどの固形分でしたが!

D 硬水では、コーヒー成分を溶かす溶媒として不適切なのでは、ないか?
・Aと関連するところですが、事実コーヒー抽出濃度は低かったです。水中に多く含まれたミネラル分が、コーヒーエキス抽出を阻害したと考えられます。逆に言うと軟水の方が何でもかんでも多く出過ぎるともいえるのです。
  
■イタリア人が砂糖入りエスプレッソを飲む理由

コーヒー先進地のヨーロッパでは、長くトルコ式コーヒーで抽出されたものを飲用していました。お湯の中に深炒りのコーヒーの粉をジャボンといれ煮出してその上澄みを飲みます。煮出すので煮出法といわれ原始的な方法ですが、今でも中近東では多く見られる抽出方法です。

1908年、ドイツ・ライプチヒ博覧会で、ドイツのメリタがペーパーフィルターを発表。濾過され固形物のない澄んだ抽出液のコーヒーが評価されるようになりました。これが近年の日本における抽出技術の基礎になります。

しかし、欧米人が日本人と飲食の嗜好が大きく違うことはお解かりでしょう。脂肪分の多い食事を大量に摂取し、アルコール度数の高いお酒をグイッと一口で平気です。淡白な煮物と刺身で水割りをちびちびといった日本人の胃袋とはつくりが違うのです。