心臓修復パッチを製造する編み機=福井市西開発3丁目の福井経編興業

 心臓修復パッチの開発を進めている、ニット生地製造の福井経編興業(本社福井市西開発3丁目、野坂鐵郎社長)は、将来的な海外販売を見据え、国際標準化機構(ISO)が定める医療機器の品質規格「ISO13485」の認証を取得した。医療資材生産用のクリーンルームも今月中に完成予定。販売開始に向けて2021年の国への薬事申請を目指しており、小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のモデルとなった取り組みの実現へ、着々と準備が進んでいる。

 同社によると、「ISO13485」の認証を、織りや編みの繊維メーカーが取得するのは国内で初めて。

 心臓修復パッチは大阪医科大、帝人と共同で開発を進めており、日本のものづくり技術を生かし医療機器の開発・実用化を推進する経済産業省の「医工連携事業化推進事業」に採択された。事業期間は14年度から3カ年で、計1億8千万円の委託費が交付された。

 同社の心臓修復パッチは、直木賞作家池井戸潤さんの小説のモデルになり、テレビドラマ化もされ一気に認知度が高まった。2種類の糸を独自の編み技術で組み合わせて作り、糸の配列と編み組織の組み合わせを工夫することで、従来品に比べ高い強度と伸長性を兼ね備えている。子どもの成長に伴って心臓が大きくなった場合でも、パッチが伸びることで再手術が不要になるなどの利点がある。現在は基礎設計を終え、動物による試験などを進めている。

 ISOの取得は品質の信頼性確保につながり、医療機器・資材を海外で販売する場合は必須とされる。取得するには汚染防止や衛生管理、リスクマネジメントなどの項目をクリアする必要があり、同社は昨秋から生産工程の文書化といった準備を進め、書類と現場での審査に合格した。

 同社敷地内に月内に完成させるクリーンルームには、編み機を2台設置する。極めて清潔な環境で心臓修復パッチを製造するほか、人工血管をはじめとする医療資材のOEM(相手先ブランドによる生産)も目指す方針。同社の技術を生かした医療分野への展開をさらに広げる考えだ。

 心臓修復パッチについては、子ども用だけでなく大人用やペット用にも販売を見込んでいる。高木義秀代表取締役専務は「販売に向けて順調に進んでいる。まずは国内で一定のシェアを獲得し、海外での販売も狙いたい」と意欲を見せている。

 【心臓修復パッチ】

 心臓の一部に穴があいている心室中隔欠損症などの手術で、穴をふさぐために使う当て布。既存の製品は、牛や馬の心膜を使った生物由来原料や、人工的な非吸収性ポリマー(ポリ四フッ化エチレン)を原料にしたものが一般的で、パッチ交換などの再手術が必要になる場合がある。国内では、新生児を含む小児患者の手術が年間約1万件ある。

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