絵葉書「向山ヨリ勝山町ヲ望ム」所蔵:宮田憲誠

■えち鉄のレールを走った蒸気機関車

1914(大正3)年2月11日、北陸最初の電気鉄道として当時の京都電灯越前電気鉄道部(後の京福電鉄福井鉄道部・現在のえちぜん鉄道)が、新福井-市荒(現・越前竹原付近)を開業させました。

この電車線の建設が始まったのは、1912(大正元年)9月1日のこと。鉄道建設工事の開始に際して、建設資材輸送のために、蒸気機関車が輸入されました。その蒸気機関車は、ドイツのオーレンシュタイン・ウント・コッペル・アルトゥル・コッペル社(1912年製造)の、動輪を2つ持つタンク式。越前電気鉄道部での形式名は「1形1号」となっていました。この蒸気機関車を使用するため、1912(大正元)年には、新福井駅に機関車を入れる倉庫や、機関車の方向を変える転車台(ターンテーブル)、石炭や水を積む設備も完備されました。


■希少資料で振り返る

この蒸気機関車の存在は、旧京福電鉄福井支社が所蔵している許認可関係で、以前から分かってはいましたが、何しろ写真機自体が世の中に普及していない時代のことで、その姿を写真で見ることは、ほぼ絶望的でした。しかし、鉄道絵はがきコレクターの宮田憲誠氏が発見した1枚の絵葉書に、なんとその幻の蒸気機関車が写っていたのでした。

宮田氏からご提供いただいた絵葉書を検証してみますと、勝山橋の鉄つり橋の部分が完成していますが、石橋部分は建設途中です。勝山橋は1912(明治45)年に架設工事に着手し、1915(大正4)年8月に竣工し、越前電気鉄道の新福井-勝山開業は1914(大正3年)3月11日です。そして、詳しく観察すると木々の枝に葉がついていません。つまりこの写真は開業直前の1914(大正3年)3月上旬頃に撮影されたものであることが推定できる・・・というわけです。