【越山若水】「ねむりのもりのはなし」という詩は「あべこべのくに」を描いている。晴れの日は土砂降りで、雨の日は晴れている。遠くは近くて近くが遠い。そんな国である▼作者はおととし亡くなった長田(おさだ)弘さん。平仮名でつづられ、子ども向けに見えて易しくはない。例えば次の詩句。「ことばに いみがなかった/いみには ことばがなかった」▼「共謀罪」法が参院本会議で成立した。委員会採決を省き、与党が数の力で押し切った。夜を徹しての国会だったが「お疲れさま」とねぎらう人はそう多くないだろう▼一般人は捜査対象になるのか、ならないのか。国際条約の締結に不可欠というのは本当か。新設した「テロ等準備罪」でテロを防げるのか。数々の疑問は置き去りにされたまま▼金田勝年法相をはじめ政府の答弁はあっても、きのうの発言がきょうには変わった。これでは「あべこべのくに」も同然。「ことばに いみがなかった」と言うほかはない▼詩人の言葉に耳を澄まそう。「はなが さけんでいた/ひとは だまっていた」「つよいのは もろい/もろいのが つよい」―▼あべこべのはずが、いまのこの国の実相を言い当てているかのようだ。国会はきょう、参院予算委で「加計(かけ)学園」問題を集中審議する。安倍晋三首相は引き続き1強を誇示するのだろうか。「つよいのはもろい」かもしれないのに…。
 

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