【越山若水】「蛍火の明滅滅の深かりき 細見綾子」。近くの川べりにホタルが飛び交っている。夜の闇をほの明るく照らす幾筋もの光が、見る者を幻想的な世界へといざなう▼時にはオス同士の発光が同調する集団明滅現象も見られる。マレーシアには大量のホタルが群がり、クリスマスツリーのように光る観光スポットがあるらしい▼福井県ゆかりの解剖学者養老孟司さんによると、物理的な共鳴に「ホイヘンスの振り子時計」がある。同じ種類の時計をつるしておくとやがて同じ周期で動きだす▼しかし動物の場合は自分中心で、相手に合わせることはほとんどない。ホタルの同時点滅やスズムシの共鳴などは例外的なケースという。ただ人間の世界では、同調や共鳴が起きることも珍しくない▼人は4歳ぐらいになると、自分を相手の立場に置いて考え、他人に合わせることを意識的に行えるようになる。その理由は「自分と相手はイコール」との心理が働くからだ▼人間が持つ優しさや思いやりはここから生まれるのだろう。ところが世の中を見渡すと、学校でのいじめ、家庭での虐待は一向に減少する気配がない▼過去最多となった児童虐待に対応し、国会で改正児童福祉法が成立した。保護者への指導に実効性を持たせる内容という。ホタルの明滅を見て思う。人として、親として「同調する心」を取り戻してほしい…と。

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