【論説】小さな村発の深刻なニュースである。山間部に位置する高知県大川村が「村総会」設置を検討し始めた。議員のなり手不足から村議会を廃止し、代わりに有権者の手で予算などの議案を直接審議するものだ。あくまで議会存続を前提とした話だが、加速する人口減少、超高齢化の中で地方自治の困難性を象徴する。同様の問題を抱える他の自治体にも大きな影響を与えるだろう。人ごとと捉えず正面から向き合いたい。

 大川村は人口約400人、離島を除き全国最少の村だ。村民の約45%が65歳以上で、現職村議6人の平均年齢は70歳超、半数は75歳以上の後期高齢者。前回選挙は無投票だった。自治に対する危機感を抱く和田知士村長は、必要に応じて村総会の検討を本格化させる考えを議会で表明した。

 まずはいかに議会の維持を図るかだ。本年中に問題点を洗い出し、年明けにも結果を村民に周知するという。次回選挙は2019年。立候補者が定数を割る事態が視野に入ってくる。

 地方自治法94条では「町村は、条例で議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる」とし、95条で「町村総会に関しては、町村の議会に関する規定を準用する」と定めている。現在、設置町村はない。過去には東京都の離島・八丈小島にあった有権者約40人の旧宇津木村(1951〜55年)の例があるだけだ。

 総会の運営は条例で定めることになる。ただ、総会の成立要件や取り扱う案件となれば、そう簡単ではない。村総会の開催に必要な定足数は有権者数の2分の1である。村外の病院や施設で暮らす人もいる村でそれを満たすのは難しい。高齢者の多さや参加負担が運営のハードルになる。

 さらに、議会でも意見が割れるような予算、条例案などをどう審議するのか。住民が意思決定する「直接民主主義」を有効に維持することは、村民の心構えや十分な学習意欲が問われ、理事者側もよほど丁寧な説明が求められよう。扱う案件などを必要以上に抑えれば、地方議会を「議事機関」としている憲法に抵触する恐れもある。

 2015年の統一地方選では、町村議の無投票当選が2割を超えた。福井県の場合も県議選12選挙区中5選挙区で、市町議選では2市町が無投票だった。これは激しい選挙戦を避けた結果だろうが、今後は全国どこでも定数割れという事態に陥る可能性がある。

 候補者の発掘、説得をはじめ、若い人材や女性の参画を促すための環境整備を進めるべきだ。当然、夜間や休日議会も俎上(そじょう)に載せ、公務員の兼職禁止についても緩和を検討していく必要があるだろう。

 議員の削減という手もあるが、安易に減じていけば多様な意見を反映する議会が成り立たず、民意の行き場がなくなるだけだ。

 議員は住民の代表であり、議会制民主主義を貫くために制度改正も含め、あらゆる手段を考えなければならない時代である。
 

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