【論説】一般住宅に有料で客を泊める基準を定めた「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が国会で成立した。2020年の東京五輪・パラリンピックに際し訪日外国人の大幅増を見込む政府が、ホテル不足解消に向け新たな受け皿として促す狙いがある。県内でも例えば空き家となった古民家や、寺社の宿坊などを活用できれば交流人口の増加が期待できる。

 一方で、既存のホテル・旅館業者にとっては脅威になる。施行は年明けとされ、規制や運営面などを示す政令や省令を待たないと活用策も見えてこない面があるが、地方にとってのメリット、デメリットを見極めた上で生かしていくことが重要になるだろう。

 近年、仲介サイトなどを通じて多くの訪日客が民泊を利用しているが、宿泊先の多くは要件が厳しいため旅館業法の許可を取得していない。「ヤミ民泊」ではきちっとした管理がなされないため、近隣への騒音やごみの放置、果てはぼや騒ぎを引き起こすなどトラブルが多発しているという。

 民泊法では、家主が都道府県などに届け出れば「住居専用地域」で「年間上限180日」のサービスが認められる。民泊住宅と分かる標識の掲示や宿泊者名簿の作成などを義務付けるほか、騒音対策や近隣の苦情への対応を求めている。違反者には停止・廃止命令を出し、従わない場合は6月以下の懲役か100万円以下の罰金を科す。

 政府は急増するヤミ民泊の是正に新法を活用したい考えだが、180日を上限とする営業日数ではビジネスとして成り立たず、はびこらせる恐れがある。取り締まりを強化すべきだろう。賃貸マンションをオーナーに無断で貸すケースなども後を絶たないという。

 問題は仲介サイトを運営する業者だろう。米大手業者の日本法人は、180日を超えた物件は表示できなくする方針を示しているが、複数のサイトに掲載された場合、どう管理するのか。なりすましなどにも十分に対応できるのか。

 政・省令では、旅館業法のように建築や消防関連、管理者の24時間常駐といった規制を課すのか否かも課題になる。厳格化すれば、民泊の普及に水を差しかねない。緩めれば訪日客の安全安心や住民の生活環境が損なわれる可能性がある。

 大変なのは監督を担う都道府県などの自治体だろう。「生活環境の悪化」が懸念される地域では自治体が180日の日数を条例で短縮できるとした点も悩ましい。線引きが曖昧で教育環境や域内の旅館業者に配慮したりするケースも出てくるのではないか。

 当面、作成される政・省令を見守るしかないが、地域で独自に検討を進めることも大事だろう。県内の自治体には、ホームステイ型の古民家活用策などを模索しているところもあるようだ。新法をうまく生かさない手はない。

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