【越山若水】米国のベンジャミン・フランクリンは、印刷業で成功し政界へ進出した。独立宣言の起草委員にも名を連ね、建国の父として100ドル紙幣に肖像が描かれている▼貧しい家庭の出身ながら、勤勉さと不屈の精神で名を上げた独力独行の人で、避雷針を発明した科学者でもある。しかし最もよく知られるのは別の業績である▼大ヒット商品「貧しいリチャードの暦」を発行した人物。生活の心構えを格言風に書き留めた日めくりカレンダーで、彼の名前は米国市民の大半に知れ渡っていた▼「眠っている狐(きつね)に鶏は一羽もつかまらぬ」「美食家の末は乞食(こじき)」など勤勉や倹約の教えが中心。その中である人に贈りたい言葉がある。「怒りと愚行は相並んで歩み、悔恨が両者のかかとを踏む」▼フランクリンと同様、実業界から政治家に転身したドナルド・トランプ大統領。地球温暖化を防止する「パリ協定」から離脱表明し、国際協調に反する姿勢に批判が集まる▼低調な支持率回復のため「米国第一」を口実にしたパフォーマンスとの見方もある。何より脱炭素社会の緊急性を理解しない科学軽視にあきれ果てる▼大先輩フランクリンの教訓通り、怒りにまかせて下した決断は、今では後悔の念に変わっていないだろうか。「米国第一」と張り上げた声以上に、全米各地の市長や企業から愚挙と反発する声が大きくなっている。

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