福井機関区機関庫で憩う、ロイヤルエンジン。 お召し列車は機関車重連で運行された。右の 日章旗を掲げた機関車が、先頭(本務)にたつ 88635号機、左が次位補機の28651号機。

越前大野駅へ回送されるお召し編成の列車 (8303列車)。回送列車は「お召し列車」で はないため列車番号が付く。

■運行機会少ないお召し列車

お召し列車とは、天皇・皇后両陛下の行幸啓に際して運転される、陛下がご乗車になる「御料車」と、関係者が乗る4両の供奉(ぐぶ)車の専用車両5両編成からなる特別列車。普段は東京の車両基地に保管され、お召し列車運行のときのみ使用されます。「御料車」は車内が漆塗りで、窓は防弾ガラス、おくつろぎになられるよう特別に室内が設えられ、陛下がご着席になる席の窓下には、菊の紋が刻まれている特殊車両です。

また、お召し列車は、(1)他の列車に追い抜かれない(2)他の列車と並んで走らない(3)他の列車と立体交差ですれ違わない・・・という原則で運転。通常すべての列車には列車ダイヤの都合上、必ず列車番号がつくのですが、お召し列車には列車番号がなく、ダイヤ上も「お召し」という扱いがなされていました。

しかし、お召し列車運行には膨大な経費や手間がかかることから、最近は航空機や新幹線・特急のグリーン車をご利用になることが多く、運行の機会は極めて少なくなっています。特に、1号編成による昔ながらのお召し列車は、車両を保管しているJR東日本管内に限られているため、身近な場所でお召し列車の気品ある姿を見ることはできなくなってしまいました。

■越美北線を走行! 久々の蒸気牽引

今から39年前の1968(昭和43)年10月1日、福井運動公園陸上競技場をメイン会場に天皇皇后両陛下と約3万5000人の観客を集め、第23回福井国体が幕を開けました。

この開幕式の翌日、大野で記念植樹祭にご臨席になった両陛下を福井へお送りするため、越前大野-福井に、「お召し列車」が運転されました。越美北線でのお召し列車運転に当たり、その栄光の牽引機関車(ロイヤルエンジン)には、当時福井機関区にいた2両の8620型蒸気機関車、88635号機と28651号機が抜擢されました。当時、国鉄は動力近代化でディーゼル機関車への置き換えが進められ、ディーゼル機関車が牽引するものだと誰もが思っていましたから、久しぶりの蒸機牽引のお召し列車運行となりに日本中の話題を集めました。

普段は越美北線で地道に貨物列車を牽いていた8620型蒸気機関車、通称ハチロクと呼ばれた大正生まれの古老の機関車にとっては、一世一代の晴れ舞台です! 当時の国鉄松任工場で細部にいたるまで万全の整備を受け、煤けた車体もこの日ばかりはピッカピカに磨き上げられました。