【論説】秋田県の山中で5月末、山菜採りの女性がツキノワグマに襲われ死亡する痛ましい事故が起きた。同県では昨年も男女4人が犠牲になり、射殺された1頭のクマの胃から人体の一部が見つかっている。

 秋田県は全域にクマの「出没警報」を発令し、警察は入山の自粛を呼び掛けている。しかしネマガリダケ(チシマザサ)は地元食として人気が高く、高値でも取引されるため入山者は後を絶たないという。

 福井県でも本紙の「クマ出没情報」が連日掲載され、遭遇する可能性は高い。油断は禁物で慎重に行動したい。

 ■6〜7月は活動的に■

 本年度のクマ出没情報は4月13日を皮切りに30件近く。小浜市で1人負傷者が出ている。県自然環境課によると2016年度は348件。近年最も多かった14年度の653件よりかなり少ないが、13年度の177件と比べると2倍に上った。長期的には増加傾向にあるという。

 月別の出没を見ると二つのピークがある。過去4年の累計1458件のうち6〜7月が456件、10〜11月が462件と飛び抜けて多く、いずれも30%を占めている。

 理由として、初夏は山菜採りやレジャーで人が山に入ることで目撃の機会が増える。また秋季はクマが冬眠に備え食べ物を探すため、餌不足となると頻繁に人里に出て来る。

 特に今の時期は子グマが親と別れて自分のテリトリー探しをする。成獣は繁殖・交尾期に入るため活動的かつ広範囲に行動する。クマと遭遇し人身被害が起きる確率は格段に高まり、細心の注意が必要となる。

 ■海岸など全域に分布■

 県内にどれくらいクマが生息しているのか。蜂蜜を置いたワナに付着した体毛を調べる「ヘア・トラップ法」による10年間のデータから、嶺北には白山奥美濃地域個体群が400〜760頭、嶺南には北近畿東部地域個体群が90〜190頭いると推定される。

 嶺南は従来より個体数が増えたため、今春7年半ぶりに改定されたツキノワグマ保護計画で捕獲上限が15頭まで引き上げられた。嶺北は同91頭で変更はなかった。ただ人に被害が及ぶ場合の捕獲は別枠になる。

 また、県が過去の出没データなどを分析したところ、新たな傾向が判明した。これまでは奥山や里山を中心に目撃されたが、最近は平野部や半島、海岸部でも出没が見られ分布が県内全域に拡大している。いわばどこにでも危険性が潜んでいる。

 ■出没続けば警戒態勢■

 交尾をしたメスは秋に着床し冬ごもり中に出産する。このため餌となるドングリ類の豊凶が子グマの数に影響する。昨秋は比較的豊作で、今年はベビーラッシュとの見方もある。

 人身被害の防止には、一般的に▽クマが出没した山に近づかない▽単独でなく複数で行動する▽音の出るラジオや鈴を携帯する―などが肝心だという。また遭遇した場合はクマから目を離さずゆっくりと後退する。クマを引き寄せないため食べ物やごみの放置はしない。

 ただ、秋田県では鈴を持っていながら被害に遭ったとされ、人間を警戒しないクマの出現を懸念する声も出ている。

 福井県に「出没警報」はないが、14年度のように出没情報が人里で連続したときは危険事象と捉えて警戒態勢を構築、市町との連絡会議開催やパトロール強化を実施するという。

 クマはこれからが活動期。出没情報や注意看板をこまめにチェックし、過信はせず安全第一を心がけたい。

関連記事
あわせて読みたい