【越山若水】「御御御付」。読めますか? と書き出して、何だか不安になった。「おみおつけ」と読めないのはまだしもで、言葉自体を知らない若者もいるかもしれない、と▼みそ汁である。一説では中世の貴人が使った丁寧な呼び名―などという説明はおくとして、おみおつけは具だくさんのみそ汁を言うとの指摘には耳を傾けたい▼年初の本欄で、一汁一菜の勧めに触れた。料理研究家の土井善晴さんの提案だ。何品も作ろうとするからつらい。野菜たっぷりの汁とご飯で十分、というのである▼その汁こそおみおつけ。野菜を煮れば味が出る。だしをわざわざ引く必要はない、とも土井さんは説いた。仕事や育児、さらに家事に追われて疲れ切った人への優しさがにじむ▼同じ料理研究家として、辰巳芳子さんは年配者向けに書いている。「身近な若い方々に美味なるみそ汁を飲ませて上げて下さい」(「辰巳芳子 スープの手ほどき」文藝春秋)▼おみおつけなんか誰でも作れると辰巳さんは思っていた。ところが「甚だしい見当違い」だった。19〜30歳頃までの女性約100人を調べたら、誰も飲んでいなかった▼和洋を問わず、命を支えるスープを作り続けてきた人である。若者の食生活の危うさは衝撃的だったに違いない。「ぐずぐずしていると、日本の底が抜ける」。焦るような思いが伝わってくる。今月は食育月間。

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