【越山若水】今どきの女性が読んだらブーイング必至だろう。今年生誕150年を迎えた文豪、夏目漱石の小説「坊っちゃん」で、主人公がうらなり君の母親に出会うくだりだ▼「御免御免と二返許(ばか)り云(い)ふと、奥から五十位な年寄(としより)が古風な紙燭(しそく)をつけて、出て来た。おれは若い女も嫌ひではないが、年寄を見るとなつかしい心持ちが…」▼50歳代の女性を「年寄」「御婆(ばあ)さん」呼ばわりするとは、漱石先生もあまりに失敬である。ただし明治20年ごろの平均寿命は男32・75歳、女33・21歳だったらしい▼エッセイストの高島俊男さんによると、医学関係に「年齢七掛け説」があるという。現代人の年齢に「七掛け」すると、明治時代の年齢に相当する。50歳なら明治の35歳、60歳なら42歳というわけだ▼逆に、明治時代の50歳は今なら71・4歳、60歳は85・7歳となる。となると漱石の表現を侮辱と責められない。日本人の寿命は驚異的に伸び、男女ともついに80歳を超えた▼県と東京大は共同で「ジェロントロジー(総合長寿学)」研究に取り組んでいる。人生80年の時代に高齢者が地域で元気に暮らせるモデルを模索する▼健康づくりや医療・介護の課題を多角的に検討し県や市町の施策に反映するという。さて「40、50は洟垂(はなた)れ小僧。60、70は働き盛り…」と豪語した先人がいた。では漱石先生、今なら何歳を「年寄」と呼びますか。

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