福井大医学部の学生に講義する谷口福井刑務所長=9日、福井県永平寺町の同大松岡キャンパス

 受刑者の高齢化が進行するのに伴い、刑務所など矯正施設の医師不足の問題が大きくなっている。法務省が常勤医師の確保に奔走する中、名古屋矯正管区の東小薗(ひがしこぞの)誠管区長と福井刑務所の谷口晃康所長は9日、福井大医学部の講義に登壇、医師の卵である学生に対し、医師確保に向けた取り組みへの理解を求めた。

 講義は福井県永平寺町の同大松岡キャンパスで行われ、医学科の1年生約100人が出席した。

 犯罪白書によると、65歳以上の受刑者は年々増加し、2015年は全体の10%を超えた。刑務所や拘置所など全国の矯正施設では医療業務が増大している半面、医師数は328人の定員を大きく割り込む275人にとどまっている。

 受刑者の3人に2人は病気やけがをしているのが現状。アルコールや薬物の依存症といった犯罪行為と密接に関わることも多いという。東小薗管区長は「健康な状態で社会へ送り出さなければ、社会福祉のお世話になるだけになってしまう」と述べ、受刑者の健康を管理する矯正医療の重要性を訴えた。

 福井刑務所では261人の受刑者のうち、60歳以上は13・7%の36人。常勤の医師はおらず、開業医3人が非常勤で対応している。谷口所長は「認知症の受刑者もいる。刑期が終わったからといって、そのまま施設から出すわけにはいかない」と説明。身元引受人がいるかなど、状況に応じて対応しているとした。

 刑務所などで働く医師が思い、やりがいなどを語る「矯正医官~法務省の医師という選択~」と題した映像も視聴した。

 学生は「社会復帰するためにも矯正医療の役割が大事だと分かった」「責任感とやりがいを感じられそう。将来の選択の幅が広がった」などの感想を持ち、関心を高めている様子だった。

 東小薗管区長は「過疎地など医師を必要としている施設は他にもたくさんあるが、将来医師になったとき、矯正医療にも興味を持ってほしい」。谷口所長は「仮に矯正医官にならなくても、刑務所から受刑者が通院することがある。機会があれば福井刑務所を見学して」と呼び掛けた。

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