【論説】学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る問題に関し、衆参両院の委員会で野党が追及を強めている。建設予定地の愛媛県今治市が開示した文書などから、内閣府が学部設置認定のかなり前から地元との協議や準備をしていたとみられるなど、「加計学園ありき」で進められてきたことが明らかになってきた。

 これに対して、政府は野党の資料請求や詳細を求める質問に一切答えていない。加計学園以外に新設に手を挙げた大学を恣意(しい)的に断念に追い込んだ疑いなど、もはや疑惑と言っていい。政府・与党は組織犯罪処罰法改正案など重要法案を会期内に成立させるとともに「加計学園疑惑」の幕引きも図ろうとしている。許されるはずがない。

 「総理のご意向」などと書かれた文書の再調査と、文書を本物と証言した前川喜平前文部科学省事務次官らの証人喚問を求める野党に対して、安倍晋三首相が「私の意向は入りようがない」などと述べるなど政府はかたくなに拒んでいる。

 そうした中、共同通信社が「現役の文科省職員が『文書を共有していた』と証言した」と報道。文書の信ぴょう性を一層裏付けるものだ。ただ、松野博一文科相は職員が実名で告発するなど、出所が明らかにならない限り再調査しない考えを示したという。自らが所管する組織の複数の職員が声を上げているのに、不誠実極まりない。

 前川氏が本物とした文書の中で、「10月7日」と記す萩生田光一官房副長官の発言とされる文書に「四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか」とある。これは昨年11月9日に獣医学部の空白地域に限って新設を認める条件が出された経緯に符号しないか。その結果、域内に他の大学の獣医学部がある京都産業大は断念せざるを得なかったのだ。

 一方で、自由党の森裕子参院議員らが今治市への情報公開請求で入手した文書には▽2015年4月2日に市の幹部職員が急きょ予定を変更し首相官邸で面談▽市などが「18年4月開学」の方針が公表される約3カ月前の昨年8月に開学時期を示した日程表を作成し内閣府に送付―といったことが判明。内閣府が認定前から主導や調整をしていた疑いが出てきた。

 皮肉なことに、政府が「確認できない」などとする文書や資料を今治市は行政文書としてきちんと残していた。森氏が「内閣府や文科省が残していないはずがない」と語気を強めたのももっともだ。

 野党側は入手文書を基に今後も追及する構えだ。政府は知らぬ存ぜぬで押し通せるつもりなのか。国民の目には見苦しいとしか映らない。矜持(きょうじ)があるなら再調査や証人喚問を堂々と受け入れるべきだ。

 首相は「諮問会議の分科会で決めるものであり、私の意向が入る余地はない」としたが、会議での素案なども内閣府が作成しているはずだ。「加計ありき」が安倍政権の既定路線だったと言わざるを得ない。

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