【越山若水】青森県の南東部、太平洋側に位置する八戸市には「早朝文化」が根付いているという。まだ暗いうちから朝市が立ち、計40軒ほどもある銭湯の半数がのれんを出す▼この生活文化を体験できるのが乗り合いタクシー「八戸あさぐる」である。事前にホテルに申し込んでおけば、泊まった翌朝、タクシーでぐるっと観光できる▼まずは朝湯でさっぱり。朝市では新鮮魚介の朝食。地元の人と触れ合え、ホテルを退出するまでの「すきま時間」も有効に使える。まさに「早起きは三文の徳」だ▼一般財団法人地域活性化センターの機関誌「地域づくり5月号」にあった。決して派手ではない。けれど、昔からある生活文化を観光資源に変えて上手につないだプランだろう▼感心しながら福井県の観光を思った。きのうの本紙によれば2016年の県への観光客の入り込み数は1652万人、消費額は1255億円。どちらも平成に入って一番だった▼気になるのは日帰り客が圧倒的に多いことだ。東尋坊や恐竜博物館を巡っただけで福井を知ったと思われては残念。八戸のような「着地型」商品を考案できないものか▼それで儲(もう)かるのか? と問われても答えようがない。代わりに、最近出合った言葉を書き付けたい。儲けようとすれば儲からないし、売ろうとすれば客が逃げる―。観光の“極意”でもあるだろうと膝を打った。

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