【論説】認可保育所や認定こども園に入れない待機児童問題に関し、安倍晋三首相は「遅くとも3年間で全国の待機児童を解消していく」と強調した。働く女性が増える中で意欲的な対策に聞こえるが、実態は目標の3年先送りにすぎない。見通しの甘さを反省し、実効性のある施策を打つべきだ。

 政府は2017年度末までに待機児童解消を目指し、首相も公約に掲げていた。しかし、1、2歳が全体の約7割を占める待機児童はこの2年間高止まり。16年4月時点では全国で2万3553人に上る。

 18年度からの新計画「子育て安心プラン」では、必要な保育の受け皿の整備目標を設定した。2年間で22万人分の予算を確保し20年度末での解消につなげる。さらに21〜22年度で10万人分を上積み、5年間で32万人分の受け皿拡充を図る。

 考えてみれば、安倍政権の女性活躍政策が待機児童を多く生み出したのだ。人口減や景気回復などによる人手不足を女性の社会進出に依拠し、子育て世代へのしわよせが強まった。まさに政策の自縄自縛である。

 政府は6日、首相が本部長を務める「すべての女性が輝く社会づくり本部」会合を開き、女性活躍加速に向け重点方針を決定した。育児休業や残業時間を再検討。働きやすい環境を整備する計画のようだが、もっと待機児童対策を前面に打ち出し、子育て世代の負担軽減を図るべきだ。

 現在、25〜44歳の女性の就業率は約73%。政府は22年度末までに80%に上昇すると想定する。対応は急務であり、肝心の保育施設整備や人材をどう確保するのか。必要な財源確保のめどすら立っていないのは、見せかけの政策であろう。

 待機児童数約2万3千人はそう多くないようにも映るが、この集計から除外されているのが「潜在的な待機児童」だ。特定の保育所のみ希望したり、保護者が育児休業中などの場合、待機児童に含めるかは市区町村に委ねている。大半の自治体は集計から除外しており、これら「隠れ児童」を含めれば、全体で約9万人に達するのだ。

 昨年「保育園落ちた日本死ね」という匿名のブログが反響を呼んだ。とりわけ東京23区や政令指定都市など都市部で問題が深刻化している。福井県は潜在的ケースも含め、待機児童ゼロではあるものの、年度途中に希望した場合は入園できない例も数多くある。

 保育士の確保も難問といえる。せっかく保育所を新設しても人材が集まらず、定員を減らす例もある。賃金を上げて待遇改善を図っても、厳しい勤務状況から早期退職する者は多く、「潜在保育士」は全国で70万人以上とされる。

 待機児童は働き方の付属的な問題ではない。非正規雇用が約4割を占め、一人親家庭では貧しさから満足に保育を受けられない子供たちがいる。それが就学時の学力差やいじめにつながる。少子化は子育て環境の悪化が大きな要因だ。既に保育段階からの義務教育化を考える時期に来ている。

関連記事