【論説】ロンドンで車が次々と人をはね、7人が死亡し大勢が負傷するテロ事件が発生した。先月22日には同じ英国のマンチェスターでコンサート会場を狙った自爆テロが起き8歳の女の子を含む22人が亡くなった。共に「イスラム国」(IS)絡みとされる。


 近年、イスラム社会のラマダン(断食月)の時期に相次いで発生しており、今年も一層激化する恐れがある。旅行やビジネスなどで渡航する人は、外務省の海外安全情報を参考にするなど十分注意してほしい。


 マンチェスター以降、イラクやエジプト、フィリピン、インドネシア、アフガニスタンなどでテロ事件が発生し多数が犠牲になっている。多くがIS絡みの事件とされる。ISはイラク軍などの反攻で劣勢にあり、世界各地で潜伏するメンバーや信奉者にテロを呼びかけているという。


 マンチェスターの事件後、英国ではイスラム教徒に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が拡大。モスクへの放火をはじめ、嫌がらせをしたり、人種差別的な暴言を浴びせたりする事例が相次いでいる。


 イタリアで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議では「テロと過激主義への対策はG7にとっての優先課題」と表明した。一方で民族や宗教の排斥がテロや過激主義の土壌となる不信感を増幅させてもいる。


 トランプ米大統領が出した入国規制の大統領令もその一つであり、憎悪が憎悪を呼ぶ負の連鎖を断ち切らなければテロ事件はなくならないだろう。そのことを肝に銘じ、各国はテロ阻止に向けて努力すべきだ。


 ところで気になるのは、G7がテロ対策の第一に「(インターネットの)通信サービス・プロバイダーなどにテロ関連の内容に対処する取り組みを呼びかける」として「暴力を扇動する内容を自動的に検知する新技術開発を奨励する」と打ち出したこと。


 民間企業を巻き込み監視強化を図ろうというのは問題ではないか。参院で審議中の組織犯罪処罰法改正案にも関わる内容であり、国民の多くが行きすぎた監視社会を懸念している。ネットなどに少し過激な書き込みをしただけで捜査対象になることは内心・表現の自由を侵しかねない。


 組織犯罪処罰法改正案に関していえば、マンチェスターの事件のような「ローンウルフ(一匹狼(おおかみ))」による犯行について政府が「対象にならない」などとしているのも問題だろう。ISのインターネットなどの過激思想に感化された単独犯による自爆や車の暴走といったテロが今や主流になっているともいわれている。


 政府は、ことさらテロ対策を強調しているが、力の入れ方が間違ってはいないか。その果てに人権侵害の横行が懸念される法ができるのでは話にならない。実態を検証した上で東京五輪に備えるべきだ。

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