改正酒税法施行による安売り規制で、1日からのビール類の値上げを告知する売り場=31日、福井市内の酒販店

 酒類の過度な安売りを規制する「改正酒税法」が1日施行され、福井県内の大型酒販店や量販店、スーパーの一部はビール類などを値上げする。仕入れ原価に人件費などの販売管理費(販管費)を加えた「総販売原価」を割り込む安売りが、法規制によりできなくなるためだ。「町の酒屋さん」は価格が適正化されることを歓迎する一方で、家計には負担となり、晩酌の本数に影響を及ぼしそうだ。

 ■シビアな問題

 ラストチャンス―。福井市内の小売店では31日、5月中のまとめ買いを呼び掛けるPOP広告が売り場に並んでいた。

 関係者によると、値上げの背景には、小売店が値引きをする際の原資の一部としていた、メーカーや卸売会社からの販売奨励金(リベート)が、国税庁の指導で減額された影響もあるという。改正法では価格の明示はなく、仕入れ原価に販管費を上乗せした価格で売るよう求めている。原価や販管費は業者によって異なり、統一的な基準はない。ある小売業者は「どの程度を原価に上乗せするのか。他店の動向を探りながら検討することになる。上げ幅の差はシビアな問題」と戸惑う。

 「リカーワールド華」を展開する華(本部福井市)は5月中旬から「お客さまに伝える義務がある」と、店内のPOP広告やチラシで値上げを告知した。まとめ買いする動きも強まったという。担当者は「法令に従い価格を改定させていただきたい」と話す。ヤスブン(本社福井市)も同様に「法令に基づき、しっかりと対応したい」とした。

 福井県内大型店などのビール類の価格は、5~10%程度の値上げになるようだ。ドラッグストア大手のゲンキー(本社福井県坂井市)は、ビールや第三のビールを平均5%程度値上げする予定。ここ1カ月は駆け込み需要で売り上げが大幅に伸びた。

 ■公正な土俵

 「ようやく公正な土俵で商売ができる」と法改正を歓迎するのは、福井税務署管内の一般酒販店で組織する福井酒販協同組合の川端信雄理事長(80)。量販店のビール類の価格適正化によって「客足が戻る」と期待する。

 例えば350ミリリットルのビール1ケース(24本入り)。量販店と比べ、一般酒販店の価格は十数%高かったという。酒類全体の販売量の4割を占めるビール類だけに、その“格差”が客足減の要因となり、10年前には約320あった同組合加盟店数が今は約160へと半減した。

 酒類には致酔性・習慣性があり、国税が掛けられているという特殊性がある。川端理事長は「過度な安売りはアルコール依存症や飲酒運転、さらには未成年者の飲酒を招く恐れがある。また酒販業者の経営が立ち行かなくなれば、国の財政にも影響する」と法改正の背景を説明する。

 ただ若者の酒離れが叫ばれる昨今、「われわれ一般酒販店の自助努力も欠かせない」と力を込める。客足を取り戻すには配達や掛け売り、商品説明力といった強みを生かしつつ「適正飲酒の指導、地域福祉や交通安全活動への参加など、かつての『村の世話役』としての役割も重要になる」と川端理事長は考えている。

 

 【改正酒税法】 ビールなど酒の行き過ぎた安売りの規制を目的に、議員立法で昨年5月に成立した。量販店が仕入れ原価に人件費などを加えた総販売原価を割り込む赤字販売を続け、周辺の「町の酒屋さん」に影響を及ぼす取引を禁じる。違反すれば酒販免許取り消しなどの罰則がある。安売りするための経営努力の否定につながれば、消費者の不利益になるとの意見もある。

 


 

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