「今後の寺には弱者と寄りそう姿勢が求められる」と話す鵜飼さん=3月27日、都内

 全国の寺が減っている現状を描いた「寺院消滅」や「無葬社会」の著者、日経BP副編集長の鵜飼秀徳さん(42)は僧籍を持つ。寺を通してみえる社会や寺が抱える課題について聞いた。鵜飼さんは「今後の寺には弱者に寄り添い、生きる希望を与える姿勢が求められる」と話した。

 ―寺が減っている理由は。

 「過疎化、都市への人口流出、核家族化など社会構造の変化に飲み込まれている。檀家(だんか)制度に縛られている寺は、檀家が減っても移転できない。集落消滅の前に寺が姿を消し始めている」

 「もう一つは僧侶の努力不足。変化する時代の中で、寺として僧侶としての存在意義は、という問いに真剣に向きあっていないのではないか。それができない寺なら消滅せざるを得ない」

 ―存在意義とは。

 「日本の寺の目的は大きく二つ。一つは墓があるから供養。もう一つは信仰の場。現在の寺離れは、檀家が『寺は墓さえ管理してくれればよい』と考えているからで、寺にいるのは僧侶でなくてもよいということになる。信仰の場という存在意義が薄れている」

 ―われわれの暮らしの中で信仰の場は必要か。

 「社会構造が変化し、貧富の差が大きくなり、貧困世帯が増えている。高齢化によって、一人で寂しく亡くなったり、家族が共倒れしたりというケースも多い。信仰に生きる僧侶にこそ、悩みを打ち明けられることもあると思う。生きる希望を持てる一言で、救われる人がいる」

 「檀家や地域住民に寄り添う僧侶が求められ、そのためにはコミュニケーション能力が問われる。最終的には寺が弱者の味方になれるかということ」

 ―寺離れの弊害は。

 「都市部の人が田舎にある菩提(ぼだい)寺との関係を解消し、墓の引っ越しを行うと、古里に帰ることが完全に無くなる。これまで、墓を守ることは、過疎の一つの歯止めになっていた。地方と都市の分断がいよいよ進む。国が掲げる地方創生にも大きなネックになるだろう」

 ―どんな寺であるべきか。

 「寺には門があり塀があり、プライベートな空間になっている。子どもたちが気軽に入っていけるように開くことが重要だ。小さいときから住職と顔見知りになれば、困ったときには相談するようになる。それが地域のつながりの核になる。防災上も重要なインフラになり得る。行政も意味ある地域のインフラとして、もっと寺を活用していくべきだ」

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