新入社員に仏教や社会人の心得を教える柴田文啓住職(右)=3月、長野県千曲市の開眼寺

 標高500メートル、四方を山に囲まれた長野県千曲市の開眼寺。小高い丘に建ち、集落やリンゴ畑が見渡せるこの寺には、春になると多くの社会人がやって来る。

 3月29日、愛知県の自動車部品会社の2泊3日の新入社員研修会が開かれ、高校や大学を卒業したばかりの19人が参加した。柴田文啓住職(82)=福井市出身=は「そもそも宗教とは何でしょうか?」と問いかけ「お経は人間の価値ある生き方を示しているんですね」と、仏教を分かりやすく説いた。上場企業の研修会も毎年恒例となっている。

 理由は経歴にある。福井大卒業後、大手の横河電機(東京)に就職。米国の電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)との合弁会社設立にかかわるなどし取締役、横河アメリカ社社長を歴任した後、62歳で退職した。

 父を戦争で亡くし、小さいころから仏壇に手を合わせる母の後ろ姿を見て育った。30歳のころからは仕事の傍ら、寺に通い座禅を続けた。ある老師との出会いもあり、定年後は「老師のまね事でもいいから僧侶になる」と決めていた。1年余の修行を積み2001年、10年以上無住だったこの寺に入った。檀家はないが「葬式で収入を得るつもりはなかった」。

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 「今を生きる人間の悩みに寄り添うのが僧侶の本来の役割」。柴田住職は、檀家制度の下で葬儀や法事に依存する現代の寺の在り方に疑問を投げ掛け「このままでは仏教は衰退する」と警鐘を鳴らす。

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