どれくらいだろう。劇場に足を運ぶ習慣がなくなって随分経つ。気鋭の劇団にも疎くなり、だから当然「マームとジプシー」は名前しか聞いたことがなかった。主宰者が男性であることも知らなかったし、藤田貴大と言う名であることとも、こんなにも切実に自分自身と向き合い、狂気を表現に昇華させている人だということも。先日刊行された自身初のエッセーを手にするまで知らなかった。

 本書は女性誌「anan」での連載を中心にまとめたものだそう。帯には今や圧倒的に影響力のありそうなピース又吉からのコメント。しかもそこには「透きとおった変態性」という言葉……。これは、来たな。そう確信した。気になるかならないかと訊かれたら気になる一択だし、手に取るか取らないかと訊かれたら手に取らない手はない。そんな感じで迷わず、レジ直行。

 タイトルの通り、「おんなのこ」がテーマのエッセー集。いや、正確にはおんなのこの、キレイで可愛くていい匂いのする部分と、そのいい匂いじゃ隠しきれない生身の部分(と、そこに惹かれる彼自身)を描いたエッセーという感じ。

 腕の毛がほかの人よりも濃かった女子のこと。後輩女子の吐瀉物を処理した際、その温もりに触れ、彼女を愛おしいと感じたこと。サンダルで歩いていて小指の爪を割ってしまったであろう、道端でしゃがみこむ小学生女子を見て、連れ去れることができると思い、そしてそんなことを考えてしまった自分を責めたこと……。

 なんというか、正直であり、狂気じみている。これらのエッセーが女性誌の代表格とも言える「anan」に連載されていたことにも驚くが、その書籍がど田舎の、鈍行しか止まらないような駅の、21時閉店を謳いながら20時50分に駆け込もうとするとシャッターが全落ちしているような、手書きの領収書しか出てこない書店に、面出しで並んでいたことも衝撃。

 と言うと、かなり過激な内容のようだけど、正しいか正しくないかを一旦横に置いてでも表現せずにはいられないその切実さが、まっすぐさが、読む者の胸を打つ。

 そんな藤田が主宰を務める「マームとジプシー」は今年設立10周年だそうで、大規模ツアーを敢行するんだとか。まっすぐな変態がつくる演劇、俄然興味が湧いてきました。

(マガジンハウス 1300円+税)=アリー・マントワネット

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