「アートたけし展」などさまざまな展示会が開かれる金沢市の金沢21世紀美術館

山出保氏

 さまざまな分野で活躍する著名人や識者に、福井へのメッセージや専門的な立場からのアドバイスを聞くシリーズ。今回は、歴史と文化のまちづくりを進めた前金沢市長・山出保(85)さんにインタビュー。

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 北陸新幹線の金沢までの延伸開業が2015年3月にやっと実現した。福井県と延伸運動を一生懸命に取り組んできた成果だ。金沢市の観光客は増えており、新幹線の魅力をあらためて感じている。ストロー現象で東京に(人などが)吸い取られると言われたが、そういったことは起きていないと思う。まちなかにはホテルやマンションが建ち、土地の価格も上昇している。

 金沢市のまちづくりには昔ながらの町並みを残す所と、開発する所をきっちり区分けして取り組んだ。中心部の交通渋滞を減らすための環状道路を整備する一方で、昔ながらの茶屋街や寺を残した。

 古いものを大事にしながら新しいものも造っていった。その中で、現代美術をテーマに04年にオープンした「金沢21世紀美術館」については「金沢には似合わない」とみんなが反対していた。当初は四面楚歌(そか)の状態だったが、多くの人が来てくれている。

 JR金沢駅東口にある鼓門も「異様」などとも言われた。造ったときには評判が良くなかったが、まちには顔がないといけないと思った。日本の町はあまりにも均一化している中で、顔をつくりたかった。金沢に不似合いだとも言われたが、米国の旅行雑誌の「世界で最も美しい14駅」に金沢駅が日本で唯一選ばれ、世界的に評価されると批判はなくなった。

 伝統と創造で、いろんなものがあってこそ元気が出ると思う。多様性があるからこそ可能性や持続性が生まれる。まちづくりに大事なのは個性で、金沢市の場合は「歴史と文化」だった。

 自分から見た福井の個性は、戦災や震災から不死鳥のように立ち上がったこと。福井らしさは「不屈」ではないかと感じる。ただ、これは自分の考え。大事なのは福井の個性は「何か」を地元で議論し、共通の意識を持つことだ。金沢は金沢であり、福井は福井。まちはその土地の人がつくる。

 まちづくりはハードだけではない。北陸新幹線の役割は東京から知恵と人を呼び込むことだと思っている。その知恵と人が地元の人材と混じり合い、新しいものをつくり出すことが新幹線の機能である。福井は戦災や震災で多くの古いものが失われたので、ソフト面を充実させることが特に大事だろう。人のまねをしていては絶対にだめ。本物の新しさとは何かを議論していかなくてはならないだろう。

■山出保さん(85)

1931年、金沢市生まれ。金沢大卒。同市役所職員を経て、90年に金沢市長に初当選し、2010年まで5期務めた。03~07年には全国市長会長を務めた。13年からは石川県中小企業団体中央会長を務める。

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